2015 Fiscal Year Research-status Report
エーテル型リン脂質特異的ホスホリパーゼDの基質認識メカニズムと反応機構の解明
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15K05557
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
杉森 大助 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (40272695)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼD / 立体構造予測 / 部位特異的変異解析 / 速度論解析 / 基質認識メカニズム / リゾプラズマローゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的の酵素の結晶化がうまくいかなかったが、いくつか問題点も明らかになった。そこで、結晶化は次年度に詳細に検討することにし、H27年度は目的酵素の立体構造をコンピュータ予測することで解析を進めた。目的酵素の立体構造予測は、公的データベースに登録されている既知類似酵素のうちx線結晶構造解析され、かつ類似度が高い5種類のタンパク質データを用いて実施した。さらに、基質類似化合物が酵素にどのように結合するのかコンピューターシミュレーションにより解析した。これらの解析結果から、触媒作用に関与するアミノ酸残基、基質結合部位にあたるアミノ酸残基、基質認識・識別の役割を果たすアミノ酸残基、触媒反応メカニズムの推定を行った。これら機能推定したアミノ酸残基が、予想通りの機能を持つのか明らかにするために、別のアミノ酸に置換して酵素の活性や基質との親和性がどのように変化したか解析した。その結果、46番目と88番目のヒスチジンが基質のリン酸エステル結合を加水分解する触媒作用を発揮するアミノ酸であり、55番目のアラニン、56番目のグルタミンが基質のコリンを認識する可能性が高いことがわかった。また、211番目のフェニルアラニンが基質分子のコリンと基質のsn-2位の水酸基あるいは脂肪酸エステル鎖を認識することを示唆する結果を得た。 さらに、物理化学的(速度論的)解析の結果、本酵素はエタノールアミン型基質よりもコリン型基質に対する親和性が極めて強く(コリン型基質に対する結合力はエタノールアミン型基質の約35倍強い)と、1分間あたりの触媒回数(ターンオーバー数)もコリン型基質の方が約15倍多かった。その結果、コリン型基質に対する触媒効率はエタノールアミン型基質の約500倍に達することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的酵素の結晶化ができず、X線結晶構造解析が未達成であるが、その他については計画通り研究を実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、酵素の結晶化を進める。H27年度の研究において、良好なタンパク質の結晶が得られない原因としてヒスチジンタグが結晶化に悪影響を与えている可能性とタンパク質の凝集が考えられた。そこで、H28年度は別のタグを用いてタンパク質を調製し、かつ凝集が発生しないように緩衝液組成を考慮して結晶化を試みる。次に、超高感度熱量測定装置を用いて、酵素とカルシウムイオンの結合定数と結合個数の測定と酵素が基質を加水分解する時に発生する超微量熱量の変化を測定して基質識別や触媒作用において重要な役割を果たす相互作用の種類とその割合、酵素と基質分子の構造変化の度合い、特徴を調べる。 さらに、H27年度中に明らかになった別のアミノ酸残基の関与について、変異酵素を作成して速度論的解析(基質との親和性や触媒効率の解析)を行うことで、さらに基質認識メカニズムを調べていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)