2016 Fiscal Year Research-status Report
エーテル型リン脂質特異的ホスホリパーゼDの基質認識メカニズムと反応機構の解明
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15K05557
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
杉森 大助 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (40272695)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼD / 基質認識メカニズム / 立体構造予測 / 部位特異的変異解析 / 速度論解析 / リゾプラズマローゲン / プラズマローゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
リゾプラズマローゲン特異的ホスホリパーゼD(LyPls-PLD)の立体構造モデルおよび基質類似化合物とのドッキングシミュレーション解析を駆使し、アミノ酸置換変異型酵素(MT)を複数種作成した。変異導入前の親型酵素(WT)の基質特異性から有意に変化したMTとして、71番目のメチオニン(M71)をG、A、L、Dに置換したMT71と283番目のフェニルアラニン(F283)をG, E, K, R, Wに置換したMT283を得た。MT71は、いずれもコリン型リゾプラズマローゲン(LyPlsCho)に対する活性が低下した一方、本来ほぼ作用しなかったリゾPAF(LysoPAF)に対して活性が約2倍向上するように大幅に基質特異性だけを変化させることに成功した。また、MT283のうちF283EとF283WにおいてもLysoPAFに対する活性が向上した。特に、F283WはLyPlsChoに対する活性はWTと大きく変わらず、LysoPAFに対する活性のみが約2倍増大した。そこで、すべてのMTについて、速度論解析を行うことで、酵素と基質との親和性(結合のしやすさ)や触媒回転数、触媒効率を詳細に比較・解析した。その結果、基質結合部位の底部に位置すると予想されたM71は、Mより側鎖のサイズが大きくても小さくても基質がうまく結合できなくなり、触媒活性が低下することがわかった。F283に関しては、より大きな嵩高いアミノ酸に置換すると、LysoPAFに約2倍活性が向上するようになることがわかった。WはFよりも嵩高いにも関わらず、そのインドール環の傾きを変えることで基質を取り込んだ後、その疎水効果で基質のsn-1位アルキルエーテル鎖の末端付近の炭素鎖と相互作用して「蓋(フタ)」のように基質を押さえることで触媒作用が起こりやすくなったのではないかと結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である基質認識メカニズムの全容解明に一歩迫る非常に興味深い結果が得られた。特に、酵素の比活性を低下させずに、基質特異性を大幅に変化させることに成功している点で、研究は順調に進んでいると評価した。また、学会発表2件、学術論文発表3報、特許出願1件の成果を挙げることができた点からも順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドッキングシミュレーション解析の結果、F283は基質ヘッドグループのコリンとの距離が約5オングストロームと近く、基質ヘッドグループ認識への関与は十分考えられる。一方、M71は基質ヘッドグループとの距離が約10オングストローム以上あり、両者が相互作用するとは考えにくい。しかしながら、ネイティブ酵素においては両者の距離が近い可能性もあることから、今後X線結晶構造解析により酵素の立体構造の解明を進めたいと考えている。さらに、別のアミノ酸の関与が考えられる箇所が数カ所あるため、これらアミノ酸についても同様に変異導入解析を進め、基質認識メカニズムの全容解明に繋げていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
予算使用にあたって、数千円の余剰金が発生した。別予算との合算使用や文具などの購入も検討したが、必要性の低い物品を購入するよりも、次年度に使用する方が良いと判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越すことで有意義に使用する。
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Research Products
(7 results)