2015 Fiscal Year Research-status Report
ペプチドデホルミラーゼによって活性化される生物種選択的MetAP阻害剤の創成
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15K05567
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
長田 聡史 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50284609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒玉 浩明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80205418)
平 順一 九州工業大学, その他の研究科, 助教 (20549612)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチドミミック / 酵素阻害剤 / ペプチドデホルミラーゼ / メチオニンアミノペプチダーゼ / 抗菌活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌由来ペプチドデホルミラーゼ(EcPDF)の基質ペプチドミミック分子としてのトリアゾール含有疑ペプチドを設計し,メチオニンから誘導したアルキンとジペプチドのN末端合成した。L-メチオニンから誘導されるアルキン誘導体については,再現性が低く極めて低い収率で得ていたが,反応条件の検討の結果,前駆体アルデヒドの合成条件をSwern酸化からParikh-Doering酸化に変更,アルデヒドの一炭素ホモログ化による末端アルキン合成法の反応試薬系をトリフェニルホスフィン-CBr4条件からヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)-CBr4へ改良することで安定してアルキン体を確保できるようになった。トリアゾール合成におけるもう一方の原料となるアジ化物の調製は,ジアゾ転移試薬ADMPを用いたジアゾ転位反応をジペプチドのN末端アミノ基に対して行い,アジド化ペプチドを満足な収率で得た。これらの化合物のクリック反応により,トリアゾール含有化合物群を得た。 トリアゾール含有基質のS2′とS3′に相当する位置には通常のアミノ酸から誘導できるもの以外にβアミノ酸,芳香族アミンを導入し,PDFにより認識可能な構造を探索した。評価の結果,S2′位置には脂肪族アミノ酸残基とS3′位置には芳香族アミノ酸残基が必要であることを見いだした。見いだした構造要件は既存のMetAP阻害剤に類似した構造であり,次の段階が有望であることが期待できる。一方で柔軟性の高すぎるβアミノ酸,直鎖アミンは多様な配座をとるためかPDF認識には適していなかった。S1′はノルロイシンに置換すると大幅に認識が低下することから,メチオニン残基の維持は不可避と考えていたが,ペプチド系の実験からチエニルアラニンが充分認識可能であることを見いだした。チオエーテルの酸化が失活の一因になり得ることを考えると,代替基として有力な候補である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌由来ペプチドデホルミラーゼ(EcPDF)の基質ペプチド群の合成は全て完了し,トリアゾール含有擬ペプチドがEcPDFによって加水分解されるおおよその構造要件を見いだすことができた。当初の主要な予定は達している。 メチオニンから誘導するアルキン誘導体の収率が極めて低く,合成条件の改善検討を必要としたことや,大腸菌由来アミノペプチダーゼ(EcMetAP1)の発現についてクローニングにおけるベクターの変更を要するなどテクニカルな問題による遅延はあるが,特に大きな障害とはなっていない。 PDF阻害剤の標的誘導型合成の予備実験を前もって行っているが,ヒドロキシ尿素型阻害剤ではトリアゾール含有ペプチドはPDFに対して顕著な阻害作用を持たなかった。これはヒドロキシ尿素とトリアゾールの堅固な平面構造が要因と考え,ヒドロキサム酸型の阻害ユニットモデルに再設計して合成を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度より引き続き,構造活性相関研究を行う。特にチエニルアラニン含有基質の探索をあらたに調査する。PDF基質として処理可能な構造が既存のMetAP阻害剤に類似した構造であることから,MCB2813の様な既存のメチオニン残基含有MetAP阻害剤に対してホルミル基を導入した化合物がPDFによって脱ホルミル化されるかを調べるなど既存のMetAP阻害剤を利用した基質探索を行う。 脱ホルミル化されたトリアゾール含有ペプチドについてEcMetAP-1における阻害作用を検証する。前述のPDFによる活性化速度と本系の阻害能を比較検討する。この際,ホルミル体からのPDFによる活性化を伴う阻害作用を検証するための,蛍光標識基質などを用いたカップリング評価系を構築する。 酵素を用いたin situ クリック反応をめざし,PDFに対して検証したヒドロキシ尿素型トリアゾール含有阻害剤は有効な阻害作用を持たなかった。このため,より強力な阻害ユニットであるヒドロキサム酸系の基体阻害ユニット探索を新たに開始する。
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Research Products
(3 results)