2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ハイブリッド型足場材料を用いた間葉系幹細胞の分化制御
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15K05570
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
飯島 一智 東京理科大学, 工学部工業化学科, 助教 (30468508)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / ヒドロキシアパタイト / 多糖 / 細胞接着 / 分化 / フィルム / 細胞足場 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク吸着層を介した擬似体液(SBF)中でのポリスチレン(PS)へのヒドロキシアパタイト(HAp)被覆法に関し、多孔質材料への応用とタンパク吸着層の影響について検討した。従来は平面PS基板を用いてHAp被覆を行なってきたが、溶液ベースの本手法では多孔質など複雑な形状の材料表面に対してもHApによる被覆を行えると考えられる。そこで、市販の多孔質PS細胞足場材料を用い、HApによる被覆を試みた。タンパク吸着、交互浸漬処理、SBF処理条件を最適化することで、多孔質構造を保持したまま骨類似HApにより均一に被覆することができた。HApにより被覆した多孔質PS足場にヒト間葉系幹細胞(hMSC)を播種、培養すると、材料内部まで細胞が進展している様子が観察された。未処理の多孔質PS材料での培養と比較して細胞周囲により多く線維状細胞外マトリックスが存在しており、HAp被覆多孔質材料中での培養により細胞の活性化が示唆された。タンパク吸着層として従来用いてきたヒト血清アルブミン(HSA)以外にも1型コラーゲンや酵素、酸性タンパク質アナログとしてポリグルタミン酸を用いた場合にもHAp析出が誘起され、HAp層からの生理活性分子の徐放などへの利用も考えられた。 多糖複合フィルムにおいては、昨年度見出した構成アニオン性多糖の種類による線維芽細胞の接着、増殖性の違いについて、ELISA法を用いたフィブロネクチン吸着量の定量やレオメーターを用いた貯蔵弾性率の測定を行うことでそのメカニズムの解明を目指した。結果、アニオン性多糖の種類によって貯蔵弾性率が大きく異なっており、多糖の化学構造に基づいた細胞-多糖間の相互作用に加えてフィルムの機械的特性の細胞接着、増殖への関与が示唆された。さらに、フィルム上での間葉系幹細胞hMSCの分化特性の解析にむけ、細胞接着、増殖性評価について予備的検討を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は骨類似アパタイト被覆ポリスチレンおよび多糖複合フィルムという2種類のハイブリッド型細胞足場におけるヒト間葉系幹細胞(hMSC)の接着、増殖挙動と各細胞系列への分化特性を明らかにするとともに、材料作製へフィードバックし、分化を制御可能な材料作製の開発を目的としている。 初年度、骨類似アパタイト被覆ポリスチレン上でのhMSCの分化挙動を解析し、骨芽細胞への分化が顕著に亢進し、脂肪、軟骨細胞への分化が抑制されることを見出した。本年度は、多孔質材料もHApにより被覆が可能であること、ヒト血清アルブミン以外のタンパク質も吸着層に利用できることを明らかにし、これらの知見はhMSCの分化の制御に向けた材料設計の重要な指針となるものである。 一方、多糖複合フィルムについては、初年度アニオン性多糖により線維芽細胞の接着、増殖性が大きく変化することを明らかにし、本年度はそれが細胞-多糖間の相互作用に加えてフィルムの機械的特性の影響であることを示した。基材への接着性は幹細胞の分化を左右する大きな因子であることから、アニオン性多糖の種類によりhMSCの分化挙動が大きく異なることが予想される。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はおおむね順調に進展しているため、研究計画の大きな変更は必要ないと考える。 HAp被覆多孔質材料を用いて間葉系幹細胞(hMSC)の分化特性の評価を行うとともに、異なる形態の3次元構造を有する材料へのHApによる被覆についても検討する。 コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリンおよびアルギン酸とキトサンからなる多糖複合フィルム上でのhMSCの分化挙動の解析を行い、フィルムを構成するアニオン性多糖の種類がhMSCの分化特性に与える影響を明らかにするとともに、従来のフィブロネクチンによる多糖複合フィルム表面の機能化に加えて、ペプチドを用いた表面機能化について検討する。
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Causes of Carryover |
多糖複合フィルム上での間葉系幹細胞の分化特性解析の前に、アニオン性多糖の種類により線維芽細胞の接着・増殖挙動が異なるメカニズム解析を行なったため、試薬購入時期に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究自体は順調に進捗しているため、購入予定であった試薬を次年度に購入する際に使用する。
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