2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K05571
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
宮崎 達雄 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 准教授 (70410222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛澤 悠葵 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70623768)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カルバ糖鎖 / コア2糖鎖 / モノクローナル抗体 / 癌悪性度診断マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、糖タンパク質に分岐型コア2糖鎖構造を形成する糖転移酵素C2GnTの発現量の増加が、いくつかの癌において悪性度と相関することが示唆されている。また、この酵素C2GnTは尿中のムチン型タンパク質MUC1に分岐型コア2糖鎖を付加する機能をもつ。 本研究課題では、このような知見を利用した新規な癌悪性度診断法の確立を目指して、生体内における安定性に優れた擬似糖鎖であるカルバ糖を末端に有するコア2擬似糖鎖を抗原とした抗コア2糖鎖モノクローナル抗体の作製、および、その抗体により患者尿検体中のコア2糖鎖の定量法の二点を検討課題として挙げている。 平成27年度は、分岐型コア2糖鎖(三糖)の部分構造に相当する2種類のカルバ二糖をターゲットとして合成を進めた。Carba-Galβ1-3GalNAc(カルバ二糖)を合成する上での鍵化合物であるカルバ-β-D-ガラクトースは、組換え大腸菌により数百グラムスケールで生産できる2-デオキシ-scyllo-イノソース(DOI)を原料として6-OAc-カルバ-β-D-グルコースに変換後、選択的ピバロイル化反応と分子内アシル転位反応を鍵工程とし、その合成を達成した。一方、Carba-GlcNAcβ1-6GalNAc(カルバ二糖)を合成する上での鍵化合物であるN-アセチル-カルバ-β-D-グルコサミンは、当研究室で確立した従いDOIを原料に4,6-ベンジリデン-カルバ-β-D-グルコースを合成後、リパーゼによる選択的アセチル化反応、選択的ピバロイル化反応、NaOTfによる反転反応を鍵工程として合成した。 加えて、2種類のカルバ二糖の共通の合成ブロックであるアミノエチル基を有するD-GalNA誘導体の合成も実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、分岐型コア2糖鎖(三糖)の部分構造に相当する2種類のカルバ二糖(Carba-Galβ1-3GalNAc、Carba-GlcNAcβ1-6GalNAc)の合成を検討した。その成果として、カルバ二糖合成の鍵化合物であるカルバ-β-D-ガラクトースおよびN-アセチル-カルバ-β-D-グルコサミンの合成を達成した。カルバ-β-D-ガラクトースの合成収率は概ね満足できるものであった。しかしながら、2回実施する反転反応の収率が低かったことより、N-アセチル-カルバ-β-D-グルコサミンの合成収率は低いものであった。そのため、H28年度は収率向上を目指して各反応の最適化を実施する必要がある。 予想以上にカルバ糖合成に手間取ったために、H27年度はカルバ糖と単糖誘導体のカップリング反応を実施できなかった。これに関連して、カップリング反応で使用する予定であったマイクロリアクタの購入は次年度に変更することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、H27年度に合成が完了したカルバ-β-D-ガラクトースおよびN-アセチル-カルバ-β-D-グルコサミンを原料として各々GalNAc誘導体とのカップリング反応を検討し、2種類のカルバ二糖を合成する。カップリング反応においては、微小空間で反応することを特徴とする「マイクロリアクタ」を用いたカルバ糖導入反応を検討する予定である。 カルバ二糖の合成完了後、キャリアタンパク質であるKLHを導入し、これらを抗原としたモノクローナル抗体の作製を検討する。これらの実験により、カルバ糖を含む擬似糖鎖がヒト型糖鎖の抗体作製の抗原として利用可能であるか否かを明らかとする予定である。
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Causes of Carryover |
申請書では、H27年度にマイクロリアクタを用いたカルバ糖の導入反応の検討を実施する予定であった。しかしながら、その原料となるカルバ糖合成に手間取ったため、カルバ糖と糖のカップリング反応を実施できなかった。そのため、マイクロリアクタの購入は次年度に変更することとした。このような理由より、50万円を次年度使用額として残すこととなりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記に記載したように、次年度使用額の50万円はマイクロリアクタの購入費とする予定です。研究計画に変更はありません。
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