2016 Fiscal Year Research-status Report
補欠分子族含有酵素におけるプロトン・電子移動の協同的制御機構の解明
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15K05573
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
林 秀行 大阪医科大学, 医学部, 教授 (00183913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酵素反応機構 / 補欠分子族 / プロトン移動 / 電子移動 / 銅イオン / ピリドキサールリン酸 / トーパキノン |
Outline of Annual Research Achievements |
Arthrobacter globformis 銅アミン酸化酵素(AGAO)について,中性子線解析によるプロトンの位置の決定が進展した.その結果,予想外の活性部位のプロトンの位置が判明し,AGAO の触媒反応におけプロトン-電子移動の協同的制御機構についての知見を得ることができた. トレオニン合成酵素(ThrS)については,後半の反応,すなわち ThrS の反応特異性をつかさどる重要な過程において,副反応を避けるような電子移動を可能にするプロトン化状態を探ることが必要であり,量子力学-分子力学ハイブリッド法(QM/MM 法)を用いた計算によって一定の成果が得られていたが,自由エネルギーによる評価が行われていないために現実的な反応機構との乖離が問題であった.これに対して,後半の反応における主要な 3 つの中間体,すなわちアミノクロトン酸シッフ塩基中間体,カルボアニオン中間体,および L-トレオニンシッフ塩基中間体,に対して 3 μs に及ぶ長時間の分子動力学(MD)計算を行い,また生成物支援触媒の本体であるリン酸イオンおよびリン酸イオンに類似しているが生成物支援触媒とならない硫酸イオンの存在下での各中間体の自由エネルギー差を熱力学積分法で求めた.その結果,各中間体において様々なコンフォメーションが見出され,リン酸イオンはその中でも反応に都合の良いコンフォメーションの高い比率を維持すること,逆に硫酸イオンは反応に不都合なコンフォメーションを増やし,特にアミノクロトン酸シッフ塩基中間体において副反応を助長していることが示された. 上記の主要な研究対象のほか,フラビン酵素である 2-methyl-3-hydroxypyridine-5-carboxylic acid oxygenase においても Tyr270 のプロトン移動における役割を解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Arthrobacter globformis 銅アミン酸化酵素(AGAO)についてプロトンの位置の決定に中性子線解析を行いつつあり,また Escherichia coli アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AAT)にもこの方法を適用する予定である.しかしながら,J-PARC に対する東日本大震災の影響で中性子線解析の開始が遅れており,この点において研究の進捗がやや送れていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成 29 年度は中性子線解析に力を入れる一方,平成 28 年度に行った広 pH 領域での遷移相反応のデータ解析を行い,これらを総合してそれぞれの酵素反応におけるプロトン移動過程の詳細を明らかにする.また,理論計算も引き続き行い,各中間体における電子状態を実験的なスペクトルのデータと照合しつつ計算し,多次元エネルギー準位解析に繋げる予定である. 上記のように研究の進捗がやや遅れているため,場合によっては研究期間の延長も視野に入れつつ,研究を推進する予定である.
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Causes of Carryover |
基質アナログの合成方法を改良し,安価にすませることができたこと,また,海外出張も節約に務めた結果,旅費をへらすことが出来た.このために次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3~4 報程度の英文校正の費用に相当するので,平成 29 年度発表論文の校正に使用する予定である.
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Role of the Tyr270 residue in 2-methyl-3-hydroxypyridine-5-carboxylic acid oxygenase from Mesorhizobium loti.2017
Author(s)
Kobayashi, J., Yoshida, H., Yagi, T., Kamitori, S., Hayashi, H., Mizutani, K., Takahashi, N., and Mikami, B.
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Journal Title
J. Biosci. Bioeng.
Volume: 123
Pages: 154-162
DOI
Peer Reviewed
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