2015 Fiscal Year Research-status Report
放射性Cs-137及びSr-90の光学的検出のための蛍光化学センサーのデザイン
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15K05580
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
Pichierri Fabio 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | センサー・モニタリング / 量子計算科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ククルビツリル(CB)大員環に芳香族基を導入することによって、新しいマクロサイクルを設計した。芳香族基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンの3種が候補となった。これら3種の化学修飾をした化合物のうち、ナフタレン部分に4つのフッ素基を持つCB-ナフタレンハイブリッド大環状化合物は、4.3デバイの大きな双極子モーメントを持っているため、最も興味深い化合物である。ハイブリッド大環状化合物のジオメトリーは、密度汎関数理論(DFT)の方法で最適化し、その後金属イオンにCs +と水分子3個が結合した錯体をDFTで最適化した。次に、金属イオンの付いていない新規大環状化合物と金属イオンの付いている新規大環状化合物の吸収スペクトルを調べるために、時間依存DFT(TD-DFT)計算を行った。この計算結果は、金属が大員環に結合しているときには220nmあたりのUV-Vis(吸収)帯が消失していることを示していた。よって、この結果は、今回の新規大環状化合物がセシウムに感度がよいことを示唆している。また、蛍光(発光)スペクトルについては、大環状化合物(グリコールウリル二量体)のスモールモデルを使用してTD-DFTでシミュレートした。その結果は、金属イオンの存在が、発光帯の強度の増加をもたらすことを示している。しかし、バンドの形状はCs+との複合体形成の際に有意に変わらない。これらの研究成果についての論文を科学誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな問題がなく、計算が順調に進んだため、良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
私は、今後セシウムイオンに対する選択性を増加させるようにマクロサイクルを化学修飾していく予定である。一つの方針は、ククルビツリルのナフタレン部分のカルボニル基(COMe)又はカルボキシル基(COOH)を導入することである。この化学官能基は、金属イオンに対する追加の配位部位となると考えられる。Cs2+は、7個または8個の酸素原子と結合することができる。したがって、もし大環状分子が、水和したCs2+イオンの水和殻を模倣するいくつかの酸素原子を有するなら、セシウムに対する選択性を高めることができるであろう。Cs2+に加えて、Sr2 +の錯体形成も検討する。このイオンは、セシウム137と一緒に環境に放出された放射性のストロンチウム90に由来するものである。Mg2 +、Ca2+、Ba2+のような他の金属陽イオンとの相互作用も調査し、ククルビツリル大環状化合物へのこれらのイオンの結合エネルギーを計算することで、Sr2 +の場合と比較し、考察する。 さらに、グリコールウリルの二量体のようなククルビツリルより小さい受容体について密度汎関数理論(DFT)計算を実行する。これらの小さい受容体は、化学基を付けることで付加的な部位を持っているため容易にククルビツリルを修飾することができる。したがって、このような量子化学的方法を用いることで、Cs2+とのSr2+に対する高い選択性を有する受容体を設計することができると期待される。
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Research Products
(4 results)