2015 Fiscal Year Research-status Report
革新的水電解システムによる超高濃度オゾン水生成技術の開発
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15K05588
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
岡田 文雄 工学院大学, 先進工学部, 教授 (10345093)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | オゾン水 / 電気分解 / 殺菌 / 洗浄 / 水電解 / リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フォトリソグラフィーなどの半導体製造プロセスや、プラスチック上へ金属メッキプロセスなどで使用されている、強酸、強アルカリ、6価クロムなどの有害溶液を無害なオゾン水で代替することを目指している。これを実現するためには、150 ppm を上回る「超高濃度オゾン水」を生成する技術の開発が必要となる。これを実現するため、本研究では下記の4つの新技術を開発し、最終的にはそれらの最適な組合わせにより、超高濃度オゾン水の生成技術を確立しようと考えていた。 1. 10気圧程度の圧力で運転可能な高圧水電解セルを設計・試作し、水電解時の圧力を増加させて溶存酸素及び溶存オゾン濃度を増加させることにより高濃度オゾン水を生成する。 2. 原料水の滞留時間を増加させて電解セル内での酸素、オゾンの溶解度を高めるため、従来のセルよりも電極面積を2倍以上とした大型水電解セルを開発する。 3. 電解前の原料水中の溶存酸素濃度を上げるため、マイクロチャンネル型気液ミキサーを開発し、水電解セルに酸素富化水を供給することによりオゾン生成を促進する。 4. オゾン生成活性が高いといわれているB-ドープダイヤモンド薄膜を成膜したメッシュ電極を作製し、それを大型水電解セルに組込んでオゾン濃度の向上を目指す。 今年度前半の研究において、上記4つの新技術について基礎的な評価を実施した。しかし、何れの技術を用いても、オゾン水の濃度は数%向上するのみであり、従来の数倍の濃度が必要となる「超高濃度オゾン水」の生成に大きく寄与する技術を見出すことはできなかった。そこで、新たな手段として、タンク内に貯めたオゾン水を繰り返して水電解セルに供給し、オゾン水を何度も電解する「リサイクル水電解システム」を考案した。その結果、水電解方式としては世界最高の値である 140 ppm の超高濃度オゾン水の生成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水の電気分解によって超高濃度なオゾン水を生成するため、リサイクル式水電解システムを独自に考案して設計・試作した。このシステムに用いるポンプ、継手、弁、チューブ類は、全てテフロン製またはステンレス製として、装置全体を耐オゾン性に優れた材料で組み立てた。この装置を用いて、リサイクルタンクに貯めたオゾン水を繰り返し電解することにより、超高濃オゾン水を生成することが可能となった。実際に、バッチ方式運転法においては 140 ppm の、0.1 L/min のオゾン水抜き出し方式運転法においては 90 ppm の超高濃度オゾン水を生成することに成功した。これらの濃度は、水電解方式としては世界最高の値である。 また、リサイクル水電解システムにおける運転因子(電流、リサイクル流量、抜き出し流量、オゾン生成の電流効率、ガス生成速度)と物理化学的因子(タンク内でのオゾンの気液平衡、オゾンの自己分解速度)を全て考慮したオゾン水濃度推定用のダイナミックシミュレーターを作成した。このシミュレーターは、リサイクル電解装置の仕様と運転条件を入力することにより、リサイクルタンク内のオゾン水濃度の時間発展を予測できるという優れたものである。その後、シミュレーターの計算値と、バッチ方式運転時及び抜き出し方式運転時におけるリサイクルタンク内のオゾン水濃度の経時変化を比較した結果、どちらの方式においてもシミュレーションによりオゾン水濃度の時間発展を精度良く再現できることが明らかとなった。 更に、上記のシミュレーターを活用することにより、150 ppm 以上の超高濃度オゾン水の生成を実現するために必要となる装置の仕様と、運転条件を明らかにすることができた。その結果、次年度以降の研究で用いる水電解システムの改善点と運転条件が明らかとなり、オゾン水の更なる高濃度化を実現するための指針を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、申請時に予定していた4つの新技術の研究開発を中止して、平成27年度に考案した「リサイクル水電解システム」を更に高度化する研究と、「リサイクル水電解シミュレーター」の適用範囲の拡大並びに高精度化の研究を進めていく。リサイクル水電解シミュレーターを用いた検討結果から、150 ppm 以上の超高濃度オゾン水を得るためには、リサイクル水電解システムの大型化が必須であることが明らかとなっている。これの要件を満たすため、今後は次の検討を進めていく予定である。 1. リサイクル水電解システムの大型化 (1)従来の2倍以上の電極面積を持つ水電解セルを試作し、また、それを動作させるための大型直流安定化電源を購入することにより、単位時間当たりのオゾンの生成量を増加させる。(2)大型のリサイクルポンプを購入してリサイクル水量を増加させる。これにより、液相へのオゾンの溶解を促進すると共に、触媒電極からの気泡の脱離を促してオゾン生成の電流効率を高める。 2. リサイクル水電解シミュレーターの適用範囲の拡大と精度の向上 大型の水電解システムで得られる実験データを基にしてリサイクル水電解シミュレーターを改良することにより、これまでよりも幅広い運転条件下でオゾン水濃度の時間発展を予測できるようにし、将来の更なる高濃度化と高流量化に必要な因子を解明する。 本研究では、上記の検討を進めていき、150 ppm 以上の超高濃度オゾン水を出来るだけ高流量で生成できるシステムの開発を目指したい。
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Causes of Carryover |
交付内定時期が10月下旬であったため研究期間が限られてしまい、研究に使用した直接経費は申請額を下回った。また、申請時に購入を予定していたリサイクルポンプの容量については、更に容量の大きく高価なポンプが必要であること判明したため、次年度の予算と合わせて購入することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、これまでの研究成果から本研究に不可欠であることが判明した「大容量のリサイクルポンプ(69万円)」と「大容量の直流安定化電源(27万円)」を購入することにより、着実に成果を出していく予定である。直接経費の残りで、研究遂行に必要な消耗品を購入する。
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