2015 Fiscal Year Research-status Report
嵩高いイオン液体分子の表面修飾を利用した新規反応場の創成と高性能触媒の開発
Project/Area Number |
15K05606
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
猪股 智彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40397493)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオン液体 / 修飾基板 / 金属錯体 / ナノ微粒子 / 細孔材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
嵩高いイオン液体を基板上に修飾する場合、イオン液体間の立体障害や電荷の反発から基板上に疎らにイオン液体分子が修飾され、外来性の分子を導入可能な大きさの空間をイオン液体間に創出することが可能である。我々は本技術を電極表面上へ応用し、様々な機能性金属錯体を電極上へ固定化することに成功している。本研究では本技術をナノ微粒子およびナノ細孔材料表面へ応用し、電極表面への修飾と同様の方法により機能性金属錯体をナノ微粒子や細孔材料表面へ固定化することで、新しい触媒材料の開発を試みる。 平成27年度は、従来の電極表面に嵩高いイオン液体を修飾する方法を改良し、ナノ微粒子表面および細孔材料表面へのイオン液体の修飾を行った。まずナノ微粒子として金ナノ微粒子を合成し、その表面へイオン液体の修飾を行った。その結果、当初の狙い通り、嵩高いイオン液体が修飾された金ナノ微粒子の合成に成功した。合成されたイオン液体修飾金ナノ微粒子は各種顕微鏡測定およびスペクトル法により同定した。続いて細孔材料としてFSMを利用し、その表面へシランカップリング法を用いて嵩高いイオン液体を修飾した。得られたイオン液体修飾FSMは窒素吸着測定および各種スペクトル法により合成を確認した。 得られたイオン液体修飾金微粒子およびFSMに関して、外来性の金属錯体としてフェロセンを用い、その内部空間へのフェロセンの取り込み実験を行った。フェロセンを含有した溶液中で各材料を撹拌することで、イオン液体間にフェロセンが固定化された金ナノ微粒子およびFSMの合成を行った。各種スペクトル測定により、それぞれの材料へのフェロセンの取り込みを確認し、当初の狙い通り、外来性の金属錯体をイオン液体修飾金ナノ微粒子およびFSM上に修飾されたイオン液体間の空間へ固定化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は嵩高いイオン液体の合成およびそれらが修飾されたナノ微粒子および細孔材料の開発を行うところまでが当初の計画であったが、次年度に行う予定であった外来性の金属錯体の取り込み実験まで研究が進捗した。取り込み用の金属錯体として、安定かつスペクトル・電気化学的に同定のしやすいフェロセンを用いた。 まずナノ微粒子として金ナノ微粒子を用いたイオン液体修飾金ナノ微粒子の合成を行った。金ナノ微粒子は化学合成法とレーザーアブレーション法により合成した金ナノ微粒子を用いたが、レーザーアブレーションによる金ナノ微粒子合成では十分な量の金ナノ微粒子が得られなかったため、本年度は主に化学合成法により合成された金ナノ微粒子を用いた。得られたイオン液体修飾金ナノ微粒子は各種顕微鏡法およびスペクトル法により同定した。イオン液体の修飾前後で金ナノ微粒子の大きさに変化はなく、イオン液体が当初の狙い通り金ナノ微粒子上へ修飾されたことが明らかとなった。続いて、フェロセンを含む溶液に合成したイオン液体修飾金ナノ微粒子を加えて撹拌することで、金ナノ微粒子上に修飾されたイオン液体間へのフェロセンの固定化を行った。NMRおよび電気化学測定ではフェロセンに由来するシグナルおよび酸化還元波が観測され、目的通りフェロセンが固定化されたイオン液体修飾金ナノ微粒子の開発に成功した。 次に細孔材料としてFSMを用いたイオン液体修飾FSM材料の開発を行った。FSM表面に修飾するためにシランカップリング法を利用し、目的のイオン液体を細孔表面へ修飾した。イオン液体の修飾は各種スペクトル法および窒素吸着測定により確認した。続いてフェロセンを含む溶液に得られたFSM材料を加えて撹拌することで、フェロセンが固定化されたイオン液体修飾FSM材料を開発することに成功した。フェロセンの導入はESRおよび窒素吸着測定により確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ微粒子および細孔材料表面への嵩高いイオン液体の修飾技術はある程度確立することができた。ただしナノ微粒子自体は現段階では化学合成法をベースにしているため、均一性やサイズの制御が難しいという問題も存在する。本年度はレーザーアブレーション法による金ナノ微粒子合成によるサイズ制御を試みたが、サイズ制御はある程度可能なものの研究に必要な量のナノ微粒子を得ることが難しく、本年度は化学合成法で作成した金ナノ微粒子を中心とした利用に止まった。レーザーアブレーション法によるナノ微粒子合成では収率の改善が今後も見込めないと判断し、次年度は液中プラズマ法によるナノ微粒子合成を取り入れることにした。本法もアブレーション法と同じく均一なサイズのナノ微粒子を作成可能な方法であるが、レーザーアブレーション法に比べて短時間により多くのナノ微粒子を合成可能であるため、次年度以降は液中プラズマ法によるナノ微粒子合成を行う予定である。 それ以外の部分に関しては、当初の計画以上に研究が進捗しており、次年度は当初の計画通り、主に触媒作用などの機能性を有する金属錯体をイオン液体を修飾したナノ微粒子および細孔材料に固定化し、その触媒活性についての評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ナノ微粒子作製に関して、化学合成法およびレーザーアブレーション法による合成を予定していたが、レーザーアブレーション法による合成では予想に反して十分な量のナノ微粒子が得られなかったため、必要な実験を全て行うことが出来なかった。そのため、当初計画に比べて次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はレーザーアブレーションの代替法として、液中プラズマ法によるナノ微粒子合成を行う予定である。液中プラズマ法ではレーザーアブレーション法と比べて、短時間に大量のナノ微粒子を合成可能であるため、研究の進捗が期待できる。なお液中プラズマ法に適した合成セルの開発が必要なため、本年度に生じた次年度使用額をセルの設計・開発に充てる予定である。
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