2016 Fiscal Year Research-status Report
キラリティーの実用的比色分析法を提供し得る金ナノ粒子キラルセンサーの開発
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15K05614
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
堺井 亮介 旭川工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90507196)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / キラル / 比色分析 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、製薬を含む多岐にわたる産業および有機化学を初めとする幅広い学術分野において今日強く求められているキラリティーの迅速分析を達成するために、光学活性化合物のキラリティーに依存して異なる色調を示す機能性金ナノ粒子の開発を目的とした。今年度は、前年度で得られたキラル金ナノ粒子のキラル認識能や検出感度における知見を分子設計にフィードバックし、様々なキラルレセプターで表面修飾された新たな金ナノ粒子を設計、合成し、金ナノ粒子の最適化と適用可能なキラル化合物の範囲の拡大を図った。例えば、L-酒石酸誘導体で表面修飾された金ナノ粒子を合成し、キラル認識能の評価を行った。合成した金ナノ粒子の溶液(水/2-プロパノール = 2/1)は表面プラズモン共鳴由来の鮮やかな赤色を呈していた。この金ナノ粒子にD体のリンゴ酸を添加したところ、D-リンゴ酸の添加量に伴い、赤色から赤紫色の変色、さらには沈殿の生成が生じた。一方で、L体のリンゴ酸を添加した場合、より少量の添加により色調の変化が生じた。すなわち、この金ナノ粒子はリンゴ酸のキラリティーに依存して異なる色調変化を示すことが明らかとなった。紫外可視吸収スペクトル測定からは、リンゴ酸のキラリティーに依存し、表面プラズモン共鳴に由来する吸収に明瞭な差が生じていることを確認した。また、リンゴ酸以外のキラル化合物に対しても、キラリティーの比色識別が可能であることを見出した。さらに、金ナノ粒子の分子設計が色調変化やキラル認識能に及ぼす影響に関して多くの知見を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていた様々な種類のキラル金ナノ粒子を設計、合成し、キラル化合物に対する色調変化の挙動を評価することができた。また、その内のいくつかについては、比色キラル識別に適用可能な特性を有していることを見出しており、キラル識別可能なキラル物質の適用範囲を拡大できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き多種多様な分子設計を持った金ナノ粒子センサーを創製し、適用可能なキラル物質の範囲を広げる。特に、色調差および感度に焦点を置き、得られた結果をもとに再度分子設計し、金ナノ粒子センサーの最適化を図る。また、これまでの定性的なキラルセンシングに加えて、光学純度を定量的にセンシングできる金ナノ粒子センサーを開発する。具体的には、異なる光学純度 (%ee) をもつキラル化合物を調製し、金ナノ粒子の色調変化を紫外可視吸収スペクトル測定により詳細に評価する。金ナノ粒子の構造最適化等を通して、金ナノ粒子キラルセンサーの色調から、キラル物質のキラリティーとその光学純度を決定できることを実験的に証明する。
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Causes of Carryover |
今年度は、今年度予算と共に前年度使用しなかった予算も併せて使用し、研究を加速したが、前年度未使用予算の全てを使用するに至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究は概ね想定通り進んでいるが、一部内容については次年度も継続的な検討が必要であり、当初計上していた化学試薬や溶媒、実験器具等の消耗品を次年度も購入する必要性が生じる。次年度は、今年度までに使用しなかった予算を使用し、それらの消耗品等を購入する予定である。また、次年度に計上した予算も使用し、研究を加速させ、研究目標を達成する。
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Research Products
(6 results)