2015 Fiscal Year Research-status Report
ジアセチレンナノ結晶の構造相転移ダイナミクスの制御と高性能光・電子材料の創出
Project/Area Number |
15K05618
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野寺 恒信 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10533466)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機ナノ結晶 / ジアセチレン / 固相重合 / 共役高分子 / 三次非線形光学材料 / 相転移 / サイズ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、有機ナノ結晶における協同的反応の結晶サイズ効果と光機能発現における構造相関を探究する。特に無機結晶に比べて結晶格子が柔らかい有機結晶では、結晶格子の硬さ(応力ー歪み挙動)に変化が発現し始めるサイズ領域の上限が無機結晶より相対的に大きいことが予想され、光学特性に特有のサイズ効果を発現するπ共役系有機ナノ結晶においては、光誘起構造相転移の閾値やドメイン発生/成長ダイナミクスのサイズ依存性、ナノ結晶格子における構造安定化に興味が持たれる。本申請では、ジアセチレン(DA)ナノ結晶における構造相転移型固相重合反応のサイズ効果を解明するとともに、ポリジアセチレン(PDA)ナノ結晶の三次非線形光学特性との構造相関を明らかにすることで、有機結晶の相転移現象に特有のサイズ効果の解明とバルク結晶を凌駕するナノ結晶材料の創出を目指した。 初年度は、はじめにDAナノ結晶のサイズ・形状制御を行った。特に、従来からサイズ制御が可能であったジアセチレン誘導体DCHDだけでなく、他の誘導体においても形状制御剤の添加によって、形状制御が可能性であることを見出した。次いで、DAナノキューブとナノファイバーについて固相重合によって伸長する励起子吸収の時間変化を追跡することで、構造相転移型固相重合ダイナミクスのサイズ効果を検討した。その結果、ナノキューブでは少しずつ重合が進行するのに対し、ナノファイバーでは相転移的に重合が進行することが分かった。さらに興味深いことには、PDAナノファイバーの励起子吸収ピークは対応するバルク結晶より先鋭化し、長波長側に観測された。これは、三次非線形光学感受率の増大を期待させる結果であるとともに、バルク結晶の固相重合性が芳しくなくとも、ナノ結晶において固相重合性を調査した上で、三次非線形光学特性を再検討すべき問題提起と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、サイズ・形状制御されたジアセチレン(DA)ナノ結晶を作製し、紫外線照射によって誘起される構造相転移型固相重合ダイナミクスのサイズ効果を調査した。具体的には、 (1)DAナノ結晶の対象化合物として、異なる置換基を有するDA誘導体3種を選定し、ナノ結晶のサイズと形状を制御するための作製条件を調べた。特に、作製法である再沈法において、核発生と結晶成長を制御する観点から、形状制御剤(界面活性剤)の添加と温度制御が有効であり、結晶性のナノキューブからナノファイバーまでのサイズ・形状制御を達成した。また、マイクロ波照射などの熱処理(アニーリング)によって結晶性を向上できたことは、DAナノ結晶における相転移型固相重合反応のサイズ効果を『応力-歪み挙動』の変化として議論する上で重要であった。 (2)DAナノ結晶における固相重合ダイナミクス ナノ結晶における固相重合性とサイズ・形状や励起子吸収ピーク波長との相関を調査した。その結果、ナノキューブでは少しずつ重合が進行するのに対し、ナノファイバーでは相転移的に重合が進行することが分かった。さらに興味深いことには、PDAナノファイバーの励起子吸収ピークは対応するバルク結晶より先鋭化し、長波長側に観測された。これは、PDAバルク結晶では側鎖間の相互作用が強すぎることで主鎖が歪んでいるものの、結晶格子が相対的に適度に柔らかくなったナノファイバーでは固相重合に伴う歪みの蓄積/解放挙動が変化するとともに側鎖間の相互作用が弱まることで、主鎖のπ共役系が安定化されたことが原因と考えられる。以上の事実は、三次非線形光学感受率の増大を期待させる結果であるとともに、バルク結晶の固相重合性が芳しくなくとも、ナノ結晶における固相重合性を再調査すべきという問題提起と捉えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、初年度に引き続き、他のDA誘導体ナノ結晶のサイズ・形状制御と固相重合ダイナミクスの解明を行うと共に、得られたPDAナノ結晶の構造評価(粉末法X線回折、透過型電子顕微鏡観察、電子線回折)を行う。加えて、振動分光法による結晶格子の熱的ソフト化の評価を試みる。 また、三次非線形光学特性のサイズ効果を評価するため、PDAナノ結晶の集積化を行う。一部は初年度から着手しており、特に、高分子電解質を用いた交互積層膜や移流集積法を用いたPDAナノ結晶の配向薄膜や、光硬化性樹脂モノマー(Methyl methacrylate, Alkyl acrylate, Styrene他)に再分散させたPDAナノ結晶を外部場で配向制御しつつ、分散媒を紫外光照射により光硬化させた擬似単結晶を作製し、三次非線形光学特性のサイズ効果の解明とバルク結晶を凌駕するナノ結晶材料の創出を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度請求額と合わせて、計画している研究の遂行に使用する予定である。特に、構造解析に用いる共通機器である透過型電子顕微鏡観察に追加配分する予定である。
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[Presentation] Nonlinear optical response of nanomaterials2015
Author(s)
Yoshihiko Takeda, Rodrigo Sato, Tsunenobu Onodera, Hidetoshi Oikawa
Organizer
EMN Hong Kong Meeting | Energy Materials and Nanotechnology
Place of Presentation
Hong Kong (China)
Year and Date
2015-12-10 – 2015-12-10
Int'l Joint Research / Invited
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