2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05626
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向井 貞篤 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30371735)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 非平衡開放系 / ゲル / マイクロ構造 / 音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
まずは基本となる装置として、ファンクションジェネレーターの選定を行った。当初は廉価モデルの使用を想定していたが、必要と考えられる出力振動数や電圧、波形精度、外部からの制御の面から検討した結果、中位機種(WF1948, NF回路ブロック)の購入を行った。加えて、簡易な音波発生装置として、くし型電極(Pt)付ガラス基板を選定、購入した。今回は(くし幅, くし間隔, くし長さ)が(10 マイクロメートル, 5 マイクロメートル, 2 マイクロメートル)、(3マイクロメートル, 3マイクロメートル, 2マイクロメートル)、(2マイクロメートル, 2マイクロメートル, 2マイクロメートル)の3種類を準備した。くし形電極の固定治具のため、通常の倒立顕微鏡下の観察が困難であった。そこで、光学定盤上にレンズとカメラからなる簡易な光学観察系を構築し、実験を行った。これらの装置を用いて、音波トラップ場の形成について予備検討を開始した。 上記と並行して、ゲルの固さ(~架橋密度)を評価するための手法として、原子間力顕微鏡を用いた押し込み力測定を検討した。回転式レオメーターや引っ張り試験、押し込み試験が試料全体のマクロな固さを評価するのに対して、原子間力顕微鏡を用いた手法は、微小スケールの表面近傍の固さを評価することができる。これにより、本研究で目標としている空間構造を有するゲルの固さを、局所的に評価することが可能となる。実際に、ゲル乾燥薄膜、含水膨潤ゲルの表面固さ測定を行い、使用するプローブの先端サイズにより、ナノーマイクロスケールの局所的な固さを評価できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
音波場形成の装置開発については、まずは簡易な装置として、くし形電極を用いたものを選定した。基本となる装置として、振動電場を発生させるファンクションジェネレーターの選定を行い、必要と考えられる出力振動数や電圧、波形精度、外部からの制御の面から検討した結果、WF1948(NF回路ブロック)を購入した。くし型電極付き基板は、腐食性の面からプラチナ電極、光学観察の面からガラス基板のものを選定した。(くし幅, くし間隔, くし長さ)が(10マイクロメートル, 5マイクロメートル, 2マイクロメートル)、(3マイクロメートル, 3マイクロメートル, 2マイクロメートル)、(2マイクロメートル, 2マイクロメートル, 2マイクロメートル)の3種類を準備した。くし形電極への配線に特殊な治具を使用することから、倒立顕微鏡のステージ上での観察が困難であったため、光学定盤上にレンズとカメラからなる簡易な光学観察系を構築し、実験を行った。これらの装置を用いて、音波トラップ場の形成について予備検討を開始したところである。 空間構造を有する試料評価の手法として、光学顕微鏡の他、固さなどの物性を局所的に評価することが有効である。そこでゲルの固さを評価するための手法として、原子間力顕微鏡を用いた押し込み力測定を検討した。モデル試料として、ゲル乾燥薄膜、含水膨潤ゲルの表面形状、および固さ測定を行い、使用するプローブの先端サイズにより、ナノからマイクロスケールの局所的な固さを評価できることが分かった。 本年度は、年度後半からの交付決定であったため、全体的に研究進捗が遅れているが、最低限の準備は完了している。次年度からの研究進捗の加速にさらなる努力を注ぎたい。
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Strategy for Future Research Activity |
装置については、現在、最低限の準備が整った状態であり、これらを用いて音波(トラップ)場の形成の検討を引き続き行う。使用する電極のくし幅、くし間隔と入力する振動電場の周波数、波形により、音波場がどのように変化するのか、まずはポリスチレンラテックスなどのテストプローブ粒子を分散させた試料を用いて検討する。また、化学架橋ゲルについても、検討を開始する。化学架橋可能なナノゲル分散液を上記の装置上、音波場中で架橋させ、構造形成をその場観察する。得られたゲルを取り出し、共焦点顕微鏡観察、3次元レーザー顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察により、その空間構造・物性を明らかにする。ゲル化の程度により、マイクロレオロジーや回転式レオメーターなど、他の評価手法についても検討する。さらに、広く他のゲル系についても、ゲル化における音波場の影響を検討する。 くし形電極を用いない音波場形成装置についても開発を行う。まずは、1つの振動素子を底面に配置した簡易なチャンバーを作成し、それを用いた、予備的検討を行う。並行して、2つの振動素子を対面して配置した定在音波場発生装置の開発を行う。こちらに関しては、機能を追求すると、費用、使用の容易さの面からの問題が発生すると考えられるため、慎重にその構造と仕様を決定する。いずれの場合も、テストプローブ粒子を用いた実験を最初に行うことで音波による形成力場を明らかにし、そのゲル形成過程、得られるゲル構造との関係を検討する。
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Causes of Carryover |
年度後半からの交付であったため、計画通りの支出が困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度より研究進行を加速し、計画とのずれを少なくする予定である。
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