2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05626
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向井 貞篤 京都大学, 工学研究科, 特定准教授 (30371735)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 非平衡開放系 / ゲル / マイクロ構造 / 音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、化学架橋ハイドロゲルを超音波トラップ中で架橋反応させることにより、高分子鎖密度や架橋密度などのゲルの内部構造をマイクロメートルスケールで制御することを目的としている。 今年度は、超音波振動素子とそれを駆動する電源の選定を行い、トラップの様子がその場観察可能な音波トラップ装置を構築した。本装置により、ポリスチレンラテックスビーズを用いた音波トラップの検討を行い、効率的なトラップのためには、比較的大きな粒子径と分散媒粘度により、粒子の運動を抑える必要があることが分かった。 上記の検討結果を踏まえ、まずは疎水化プルランナノゲルを集積して作成した機能性マイクロスフィアを、音波トラップにより整列させ、他のゲル中に固定する試みを行った。ナノゲル集積マイクロスフィアを1軸音波トラップにより整列させ、アクリルアミドゲルにより固定し取り出した。得られたゲルは、ナノゲルに由来する蛍光色素が縞状に並んでいる構造を有していた。縞の間隔は振動数から期待される値と近く、音定在波により、マイクロスフィアがトラップされているものと考えられる。レーザー共焦点顕微鏡により詳細な観察を行ったところ、縞には多数のナノゲル集積マイクロスフィアが集まっていることが確認された。 以上、音波トラップを用いることで、ハイドロゲルの内部に、機能性ゲル微粒子からなるサブミリメートルスケールの周期構造を形成することに成功した。他の微粒子と固定のためのハイドロゲルの組み合わせも可能であり、音波トラップを多軸化することで、様々な微粒子配列構造を有するハイドロゲルの調製が可能になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
櫛形電極を用いた装置は、電極の価格や入手性に問題があることが分かったため、超音波振動素子を用いた音波トラップ装置の開発に注力した。振動数、入手性、価格を考慮し、1 MHzの超音波振動素子を用いて実験を進めることに決定した。それに合わせて、超音波振動素子を駆動するための電源の選定を行い、出力電力と出力可能周波数、安定性を考慮し、NF回路ブロック社のBA4825を導入した。超音波振動素子を1個用い、対向して反射板を置くことで、安定した定在波を作ることができるようになった。 本装置により、ポリスチレンラテックスビーズを用いて音波トラップの検討を行った。本装置では、直径10 μmよりも小さい粒子は効率的なトラップができなかった。また分散媒の粘度が低い場合でも、粒子の拡散のため、効率的なトラップができなかった。 以上の検討結果を踏まえ、疎水化プルランナノゲルを集積して作成したマイクロスフィアを、音波トラップにより整列させ、他のゲル中に固定する試みを行った。w/oエマルション法により調製したナノゲル集積マイクロスフィアを、フィルターにより分取し、直径10 ~ 40 μmの粒子を得た。これらをアクリルアミドゲル(30 wt%)のプレゲル溶液中に分散させ、1軸音波トラップによりナノゲル集積マイクロスフィアを整列させた後、光反応開始剤によりゲル化を行った。得られたゲルを目視観察したところ、超音波振動素子と反射板の間に、ナノゲルに由来する蛍光色素が等間隔に並んでいる様子が観察された。縞の間隔は約800 μmであり、振動数から期待される値(750 μm)と近く、音定在波により、マイクロスフィアがトラップされているものと考えられる。レーザー共焦点顕微鏡により詳細な観察を行ったところ、縞には多数のナノゲル集積マイクロスフィアが集まっていることが確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状の1軸音波トラップ装置を用いて、音波トラップ中において直接ゲル化反応を行うことにより、ハイドロゲル内部の構造を制御する試みを行う。反応性疎水化プルランの系の他、一般的な化学架橋ハイドロゲルの系に関しても検討を行う。さらにマイクロ流路などでよく用いられるポリジメチルシロキサンを用いて試料チャンバーの製作を行うことにより、ゲル形状、トラップ効率、必要液量などの面での改良を行う。使用する超音波振動素子についても、試料チャンバーに合わせて、検討を行う。 櫛形電極を用いた音波トラップデバイスについては、我々の用途に適した電極の入手が困難であったことから、自作する方向で検討を行う。 また2個の超音波振動素子を用い、2軸音波トラップ装置の開発を行う。どのような2次元トラップ場が形成されるか、ポリスチレンラテックス粒子を用いて確認し、粒子径、分散媒、振動子駆動電圧などの条件を検討する。1軸の場合と同様に、音波トラップ中におけるゲル化反応により、ハイドロゲル内部の構造を制御する試みを行う。 得られたゲル材料の評価として、目視や顕微鏡観察の他、レオメーターを用いた粘弾性測定、原子間力顕微鏡を用いた微小スケール局所力学測定など、ゲルの構造が力学物性に与える影響について調べる。特に原子間力顕微鏡による局所力学測定で得られる情報から、音波とゲル密度・架橋密度の関係について考察を行う。また本技術のバイオ分野への応用展開に関しても検討を行う。
|
Causes of Carryover |
本研究費の交付開始が平成27年度後半からであり、物品の選定や調達に計画からの若干の遅れがあるため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度において研究が大きく進行し、物品の選定は終わっているため、次年度前半には計画とのずれは無くなる予定である。
|