2015 Fiscal Year Research-status Report
折りたたみ構造を有しない低分子量ポリヒドロキシ酪酸による結晶構造と水素結合の研究
Project/Area Number |
15K05629
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 春実 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10288558)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / 分子量 / 赤外分光法 / 折りたたみ構造 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々の研究でPHB の結晶構造中には分子間に弱い水素結合(CH…O=C 水素結合)が存在し、それが結晶構造の安定化に寄与していることが分かっている。本研究では、極めて分子量の小さい(分子量1000)ポリヒドロキシブタン酸(PHB)を用いて、テラヘルツ分光測定、ラマン分光測定、赤外分光測定、および時間分解小角広角X 線散乱(SAXS/WAXD)同時測定を行うことで、折りたたみ構造の有無による高分子の結晶構造形成過程の違いを明らかにすることを目的としている。 平成27年度は、ラメラ厚程度の長さしかない低分子量PHB(分子量1000)および折りたたみ構造を有するPHB(分子量2.9X10^5)の結晶構造形成過程を、赤外、ラマンスペクトルの温度変化測定、放射光を利用した時間分解SAXS/WAXD 同時測定を併せ用いて調べ、結晶構造形成過程に伴う水素結合形成過程、格子定数、ラメラ厚、結晶化度の変化等から、官能基レベルの情報とを併せて、分子全体の熱挙動を総合的に調べた。放射光施設での実験はSPring-8(FSBL03XU)で実施した。 それにより、以下の結果を得た。赤外分光測定の結果より、Mn=1000の低分子量PHBの結晶化挙動において、C-H…O=C水素結合は結晶構造を安定させる役割を担っていた。一方、折りたたみ構造を有するPHB(分子量2.9X10^5)では、結晶構造形成の駆動力としての役割を果たしていた。また時間分解SAXS/WAXD 同時測定からは、分子鎖が非常に短いために、結晶構造形成過程において隣同士のラメラ晶が合併し、より大きな積層構造を形作っていくことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」および「研究実施計画」で示した内容をおおむね実行することができている。Mn=1000の低分子量PHBの結晶化挙動については、赤外・ラマン分光法および時間分解SAXS/WAXD 同時測定を用いて、徹底的に解析を進めることができた。それにより、PHBの結晶構造中に存在するC-H…O=C水素結合は、分子量が小さく折りたたみ構造を有さないときは安定させる役割を担っており、折りたたみ構造を有する場合には結晶構造形成の駆動力として働いていることが示された。また時間分解SAXS/WAXD 同時測定においても、再現性を含めた実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続きラマン赤外スペクトルの温度変化測定、時間分解SAXD/WAXD同時測定を続けると共に、テラヘルツスペクトルの温度変化測定を行う。それらの結果を総合的に検討し、結晶構造形成過程と分子間水素結合の関係を詳細に検討する。また、分子量1000だけでなく、分子量5000, 6.5×105のPHBと比較することで、分子鎖の折りたたみ構造の有無による違いについても詳しく調べる。
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Research Products
(43 results)