2015 Fiscal Year Research-status Report
希薄溶液からの結晶化を利用した剛直高分子ナノファイバーの作製と高性能材料への応用
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15K05630
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
内田 哲也 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90284083)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノファイバー / ナノ材料 / 高性能複合材料 / 結晶化 / 剛直高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
剛直高分子の希薄溶液からの急冷結晶化を利用することにより、ナノファイバー化が困難な剛直高分子Poly(p-phenylene benzobisoxazole) (PBO)のナノファイバーを作製し、その形成機構の解明と高性能材料への応用を検討している。 分子鎖が折れ曲がることのできない剛直高分子PBO は、究極的に優れた性能(高強度、高弾性率、高耐熱性、高熱伝導性、化学安定性、電気絶縁性など)が期待されている。しかしながら、分子鎖の剛直性ゆえに融解せず、強酸にしか溶解しないため、ナノファイバーなどのナノ材料化は困難であった。本研究では、希薄溶液からの結晶化を利用してPBO ナノファイバーを作製する全く新しい方法を確立した。この場合、特別な操作、装置等は必要とせず、加熱と冷却だけで高結晶性のPBO ナノファイバーが得られる。さらに本研究では、剛直高分子ナノファイバー作製法をより系統的にまとめ、その結果をもとに剛直高分子ナノファイバーの形成機構を明らかにした。また、得られたPBO ナノファイバーを用いて、高分子との複合体を作製し、その構造制御と物性評価を行った。また、PBO ナノファイバーを用いてその積層マットを作製し、構造と物性について評価した。さらにその積層マットの複合体への応用も検討している。新しい知見が多く得られており、その結果をいかして高性能材料が開発できると考えられることから、実用化に向けての波及効果も極めて大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
剛直高分子の希薄溶液からの急冷結晶化を利用することにより、成形加工が困難な剛直高分子PBO のナノファイバーを作製した。用いるPBO の分子量、ポリマー濃度、冷却速度などナノファイバー作製条件と得られるナノファイバーのサイズ、結晶性など構造の関係を解明した。また得られたPBO ナノファイバーを用いて複合体を作製し、その構造と物性の関係を検討した。さらにPBO ナノファイバーの積層マットの作製法を検討した。さらにその構造と物性の関係について詳細に検討した。以上のように当初予定どおりの検討を実施し、おおむね順調に結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度で得られた知見をもとに、効率的かつ大量に作製できる装置を試作する。また、得られたPBO ナノファイバーおよびPBO ナノファイバーマットを用いて複合体を作製し、その構造と物性の特徴について検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に誘電率・誘電損失測定装置を購入し、作製した試料の電気的性質を検討する予定であったが、既存設備で力学特性を検討したところ顕著な向上がみられた。そこで、まずは力学的性質に重点を置いて検討することに計画を変更したため、誘電率・誘電損失測定装置を購入しておらず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には誘電率・誘電損失測定装置を購入して、得られた試料の電気的性質を検討することとし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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