2016 Fiscal Year Research-status Report
光波長応答型殺菌性分子を応用した細胞・組織加工製品の無菌化技術の開発
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15K05632
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
白井 昭博 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 助教 (40380117)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光殺菌 / フェノール酸誘導体 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェルラ酸を光応答部とした水溶性ポリマーの合成を検討した。モノマーは、β-メタリルアルコール、メタクリル酸メチルエステル、2-メチル-2-プロペニルアセテート、重合反応はAIBNによるラジカル重合とした。しかし、高分子量ポリマーの収量は極めて低かった。そこで、2-ヒドロキシエチルメタクリレートをモノマーとしてAIBNラジカル重合を検討した結果、収量高くポリマーを合成できた。そして、AIBNのmol%を0.2から2.0と条件を変えてポリマーを合成した結果、1mol%反応で分子量26000程度のポリマーが合成できた。次にカルボジイミドを用いたエステル縮合反応により、ポリマー分岐鎖末端のヒドロキシル基にフェルラ酸を導入した。そして、ポリマーの水溶性向上を目的として、グルタリル酸無水物またはコハク酸無水物により、ヒドロキシル基残基をカルボキシル基末端とした。しかし、水溶性の向上は認められなかった。 ポリマー合成と並行して、フェルラ酸の殺菌機構の解明を進めた。フェルラ酸のUV-A照射下における殺菌は、活性酸素種が関与することがこれまでの実験により示唆されている。そこで、細胞膜の過酸化状態をTBARSアッセイにより調べ、殺菌効果の認められない積算照射量2.0J/cm^2で有意に過酸化脂質を生成していることが分かった。そして、DAPI/PI染色により、高い殺菌力が得られる8.0J/cm^2において、PI蛍光量が著しく上昇することがフローサイトメトリー解析により明らかとなった。一方で、大腸菌に形質転換したプラスミドは、殺菌条件においてもスーパーコイル構造を維持していることが分かった。以上の結果、フェルラ酸は、細胞膜に吸着後、細胞膜に局在し、UV-A照射下において酸化的膜破壊を生じ、細胞死に至らしめることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
フェルラ酸を分岐させるポリマーの合成において、適切なモノマーを選定することに時間を要し、さらに、酸無水物による水溶性の向上が達成できなかった。しかしながら、フェルラ酸の細胞膜局在による酸化反応が細胞損傷に寄与することが分かったため、ポリマー分子設計において、細胞への効率的な取り込みを実現できる水溶性ポリマー構造が必要であることが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリマーに水溶性を付与できる分子設計が必要である。グルタリル酸無水物またはコハク酸無水物の反応による側鎖末端のカルボキシル基への変換は効果がなかった。そこで、N-メタクリロイルグリシンのカルボキシル基をt-ブチルカルバゼートを反応させることにより、末端に反応性置換基としてヒドラジンを導入する。ポリマーは、N-メタクリロイルグリシノイルヒドラジン(保護基あり)と2-ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体とする。次にヒドラジン末端とアルドースまたはケトースと反応させることにより水溶性を付加し、ヒドロキシル基にはフェルラ酸を導入する。もし、この手法でも低い水溶性であれば、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドを共重合反応に追加する。また、ナノパーティクルとするために、ヒドラゾン結合を介し疎水性基(ドデシル基などのアルキル鎖)を導入する。平成28年度の成果により、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)へのフェルラ酸(アセチル保護基あり)の付加は、フェルラ酸由来の紫外吸収スペクトルをred-shift(約50nm)させることが分かっている。従って、フェルラ酸をポリマーに分岐させる分子設計により、400nm付近でも光反応性を生じる可能性があり、それの結果、光単独による細胞障害性を抑えることができると考えている。合成されたポリマーの光反応性への酸加水分解の影響を調べ、光殺菌性を評価する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、有機合成試薬や微生物試験試薬といった消耗品の使用量が予定より少なく、また安価で納品できたため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、化学合成するフェルラ酸誘導体ポリマーの合成のための消耗品費および物性測定費に充てる。そして抗ウィルス活性評価を実施するためには、細胞培養等に消耗品を多く使用するので、その費用に充てる。また、9月の国内学会、10月の国際学会への参加および旅費に充てる。
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Research Products
(5 results)