2016 Fiscal Year Research-status Report
トポロジカル分子添加による高分子の絡み合い制御およびその結晶化挙動への影響
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15K05634
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
竹下 宏樹 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (80313568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結晶化 / 高分子 / トポロジカル分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から引き続き、線状、星型、環状ポリエチレングリコール(PEG)の結晶化挙動の観察を行った。今年度は特に環状高分子の検討に力点をおいた。分子量約200から約4000にわたる環状および星型PEGを線状PEGにブレンドしてその結晶化挙動を検討した。 添加環状PEGの分子量が低い場合には、線状PEGは環状PEGを結晶ラメラ外へ排除しながら結晶化したのに対し、比較的高分子量の環状PEGは線状PEGと共に結晶化した。 環状・星型PEGは添加による結晶化速度(球晶成長速度)の変化を観察した。偏光顕微鏡観察より求めた球晶成長速度は、星型および環状PEGの添加により低下する傾向にあったが、特に環状分子添加系においてその低下傾向は顕著であった。アレニウス型プロットにより見かけの活性化エネルギーの評価を行ったところ、分子量2000の環状分子を添加した系において、特異的にみかけの結晶成長活性化エネルギーが大きくなることが分かった。これは線状分子が環状分子に入り込むことによって絡み合いが増加し分子拡散が妨げられることにより、結晶構造の形成が妨げられたためであると考えられる。またこの傾きの異常は高温においてより顕著であり、からみ合い効果が結晶加速度の遅い高温側でより顕著であることが示された。環状分子添加が結晶化速度に影響を与える条件が、分子の絡み合いが解ける時間と関係するのかもしれない。 球晶生成数にも大きな添加効果が見られた。これは環状分子、星型分子においては、自由な末端が拘束され分子運動が抑制されていること、および分岐点周辺の分子密度の増大が生じやすいことによると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展している。資料の調達は、精密合成を専門とする民間ベンチャー企業との共同研究を行うことにより不自由なく行えている。 また、構造解析に必要な放射光施設のビームタイムも問題なく確保出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究において、添加する環状PEGの分子量が結晶化速度(球晶成長速度)に重要な影響を与えることが示唆された。これは、環状高分子添加による高分子の絡み合い状態が変化している可能性を示しており、今後より詳細に検討したい。 また、線状、環状、星型という分子の「かたち」は球晶成長速度のみならず結晶核の発生速度にも大きく影響することがわかってきた。これは、分子の末端の有無や分枝点近辺での分子密度や分枝運動性によるものと思われる。この効果は、各種分枝高分子や固体表面近傍における結晶化の促進・抑制とも深く関係するものと思われるので、より詳細な検討を加えたい。
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Causes of Carryover |
概ね計画どおりに支出しているが、重要な試料は共同研究先から提供されたため、測定試料準備費が想定以下だった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
星型高分子試料調達の費用に充当する予定である。
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