2016 Fiscal Year Research-status Report
米糠成分イノシトールを原料とする剛直棒状かつ主鎖分解性をもつ高分子の開発
Project/Area Number |
15K05637
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
須藤 篤 近畿大学, 理工学部, 教授 (20293053)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 天然由来化合物 / 米糠 / myo-イノシトール / オルトエステル化 / 剛直骨格 / 酸分解性 / 主鎖分解型レジスト材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、米糠の成分であるmyo-イノシトールを原料とし、そこから剛直かつ酸分解可能なビスオルトエステル骨格からなる高分子を合成し、その主鎖分解型レジスト材料としての可能性を明らかにすることである。 この目標を達成するため、4つのサブテーマ(サブテーマ1「全てのヒドロキシル基がアキシアル配向可能なイノシトール誘導体の合成」、サブテーマ2「イノシトール誘導体のオルトエステル化の条件最適化」、サブテーマ3「イノシトール誘導体とビスイミノエステル塩の重縮合反応」、サブテーマ4「ポリ(ビスオルトエステル)の耐熱性および酸分解性の評価」)を設定し、それらを順次達成していくという計画のもと、研究を遂行してきた。 今年度、当初計画では、サブテーマ3の遂行、すなわち、サブテーマ1で得られたイノシトール誘導体をビスイミノエステル塩と重縮合させることで、目的とする高分子の合成を予定していた。しかしながら、その基盤となるサブテーマ2、すなわち、サブテーマ1で得られたイノシトール誘導体とイミノエステル塩との反応の難易度が高く、このルートでの高分子合成が困難であることが明らかになった。なお、このサブテーマ3の難易度の高さは、本研究の計画段階から予想されており、そのためにあらかじめ準備を進めていた別アプローチでの研究に速やかに移行した。具体的には、前年度の最終段階で合成を達成した、両橋頭位にブロモエチル基やビニル基をもつビスオルトエステルの合成ルートの各段階を精査し、合成効率の向上に注力した。これによって、サブテーマ3が目標として掲げていた「ビスオルトエステル骨格が連続した高分子の合成」を達成する状況が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究では、ビスオルトエステル骨格からなる剛直高分子の合成を達成することを予定していた。この目的のため、27年度に合成を達成したイノシトール誘導体とビスイミノエスエル塩との重縮合反応による「ビスオルトエステル骨格の形成を伴う高分子合成」を検討した(サブテーマ3)。しかしながら、高純度のビスイミノエステルの調製が困難であったこと、さらにイノシトール誘導体との反応がさまざまな副反応を伴うこと等の問題が明らかになり、このルートでの高分子合成を断念した。 一方で、27年度に遂行したサブテーマ1でのイノシトール誘導体の合成過程において、種々のビスオルトエステルの合成が可能になったことから、別のアプローチによって目的の高分子を合成するべく方針を転換した。すなわち、まずビスオルトエステル骨格をもつモノマーを合成しておき、これを用いた高分子合成を行うことにした。そのため、2つの橋頭位に反応性部位をもつビスオルトエステルが必要となり、その合成ルートの確立に注力した。結果として今年度の目標であった高分子合成には至ってはいないものの、その準備が整うまでになったことから、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が研究の最終年度にあたることから、まずは目標としてきた剛直高分子の合成を達成する。すでにそのためのモノマーが得られており、その重合のための具体的な反応の選定も終わっていることから(チオールの付加反応およびオレフィンメタセシス反応)、3ヶ月の間に合成を達成する予定である。さらに、高分子のビスオルトエステル部位の酸加水分解を行うことができれば、本研究の最終目標が達成できる。すでに、低分子のビスオルトエステル化合物をモデルとし、その酸加水分解を達成できていることから、高分子の加水分解による低分子化も同様に行う予定である。
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