2016 Fiscal Year Research-status Report
表面官能基化した単分散ナノ粒子の重合による細孔性固体の合成と多孔質膜への応用
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15K05640
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
吉武 英昭 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20230716)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メソ細孔性物質 / シリカ粒子重合 / 固体表面間反応 / 低温固体反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
直径が20 nmと100 nmの単分散シリカナノ粒子の表面を、分散状態のままn-(6-アミノへキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン(silane A)または3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン(silane B)で修飾、溶媒除去後に乾燥して2種の表面修飾シリカを合成した。これらの修飾単分散シリカは、乳鉢で混合するという単純な方法で固体表面同士が反応することが明らかになった。ラマン分光法、赤外分光法により、混合前に観測されたグリシジル基および一級アミンのバンドが、混合時間と共に減少し、3分間で消失することが明らかになった。このことは固体どうしの反応が広範に起きていることを示唆し、シリカナノ粒子どうしの重合を可能にした初めての例となる。非修飾シリカでは30分乳鉢で混合しても、メソ領域の窒素吸着特性がそれぞれのナノ粒子を単独で計測した場合の平均になったが、修飾シリカでは新しい吸着特性が得られた。以上の証拠から計画していた反応、合成は、基本的には予想した通りに進行することが明らかになった。他の有機シランによる反応も検討したが、結局上記のsilane Aとsilane Bの組合せで、重合反応後のメソ細孔体積が最も大きくなった。20 nm粒子にsilane A、100 nm粒子にsilane Bを結合させて粒子重合させた場合より、20 nm粒子にsilane B、100 nm粒子にsilane Aを結合させて粒子重合させた場合の方が、均一に反応する。これはSEMの観察により、100 nm粒子の表面に20nmが単層で均一に結合している画像が得られていることから判断される。この理由はアミノ基同士の結合性がエポキシドより高いため、小さな粒子の表面にsilane Aがある場合、再分散が阻害されるためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体表面間反応は一般に珍しい低温固体反応であり、報告例はほとんどない。この反応形式によるシリカ微粒子の重合で多孔性固体を合成するという概念は全く新しかったため、初年度は表面有機官能基と粒子サイズの選択で費やされた。2年目の本年度はより適切な条件の探索、物理化学的な検証を行った。分光法による反応の検証や反応条件-反応性の検討から、この低温固体反応の詳細が明らかになってきた。このため概ね必要な要素は解明されている。ネガティブな結果といえるが、好ましい反応を起こさない表面修飾シランの組合せ、(MeO)3Si(CH2)3NH2 (APTMS)に(MeO)3Si(CH2)3NCO (TESPIC)、(MeO)3Si(CH2)4OH (TESB)、(MeO)3Si(CH2)3OCH2CHOCH2 (3-glycidoxypropyltrimethoxysilane, GCOPTMS)という組合せ、(EtO)3Si(CH2)3C5H5 (3-cyclopentadienylpropyltriethoxysilane, CPDPTES)に (EtO)2SiC4H6 (1,1-diethoxyl 1-silacyclopent-3-ene, DESCP3E)、(EtO)3Si(CH2)4CH=CH2 (5-hexenyltriethoxysilane, H=TES)、(MeO)3Si(CH2)6CH=CH2(7-octenyltrimethoxysilane, O=TES)という組合せがスクリーニング後、排除できたことは研究の進展には大きく寄与した。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目は最終年度であるため、応用技術の端緒となるような方向へ研究を進める。具体的には物質、物体の選択フィルターとしての応用を探求する。本研究で開発が進められている多孔性固体合成法は、細孔径を原料シリカ微粒子の径により大きく変えることが可能であるため、分子ふるいよりさらに大きな領域(概ね数nmから数十nm)での物質や物体のふるいとして有効に働くと期待できる。ニトロセルロースメンブレイン等を支持体に薄膜を作り、生体分子などの選択透過に利用できるかどうかを検討する。次に細孔表面に高密度に存在するアミノ基を利用し、水溶液中に微量に存在するCu2+、Ni2+などの遷移金属やヒ酸、クロム酸などのオキシアニオンの除去への展開を試みる。これらの毒性イオンに関しては、汚染された地下水の浄化等を想定して実験を行うが、高速除去、高容量除去が期待される。吸着の結果は様々な表面修飾シリカと比較、細孔性物質として優位な点を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
980円は、通常の価格変動により物品費が予想から外れたため、予算執行の端数として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
980円は、本年度に生じる価格変動により予算執行の端数として処理される。
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Research Products
(2 results)