2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05643
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
増井 敏行 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00304006)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境調和型 / 赤色顔料 / 酸化ビスマス / 酸化ジルコニウム / 複合酸化物 / バンドギャップ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに使用されてきた無機赤色顔料には、カドミウム赤、鉛丹、辰砂などがあるが、これら既存の顔料中には、カドミウム、鉛、水銀などの強い毒性を示す金属が含まれている。このため、人体や環境に対する悪影響が懸念されることから、世界各国において、これらの顔料にとって代わるような環境に優しい新しい顔料の開発が強く求められている。実際、世界保健機関(WHO)も、玩具や家具に使われる鉛入り塗料が劣化し、粉末になったものを吸い込むことにより、世界全体で毎年14万3千人が死亡し、知的障害者となる子供が毎年60万人以上にのぼると指摘している。そこで本研究では、人体に有害な元素及び環境に対する負荷の大きい元素を含まない無機赤色顔料の開発を目指した。 平成27年度は、赤色顔料の母体となる新たな材料として、Bi4V2O11、Bi4Si3O12及びBi4Zr3O12に着目し、これらの複合酸化物を合成し、それぞれの色を評価した。その結果、Bi4V2O11、Bi4Si3O12及びBi4Zr3O12がそれぞれ、褐色、淡黄色、橙色になることを見いだした。中でも鮮やかな橙色を示したBi4Zr3O12に対し、合成条件を最適化した結果、Bi2O3とZrO2の固相反応法により、大気中、800°C、6時間の焼成により合成した試料が最も鮮やかな色彩を示し、バンドギャップエネルギーは2.37 eVであることがわかった。さらに、この化合物のバンドギャップ縮小に伴う赤色度の向上を目指し、Bi3+イオンサイトにBi3+よりもイオン半径がわずかに小さいLa3+を固溶させることを試みたが、単相が生成せず、赤色度、黄色度共に減少した。次年度は、さらにイオン半径の小さい希土類イオンを固溶させ、赤色度の向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な無機赤色顔料の母体材料として、Bi4Zr3O12が有望であることを見いだした。この材料のままではやや赤みが不足しているが、今後、Bi3+やZr4+サイトにこれらよりもイオン半径の小さいイオンをうまく固溶させることによって格子を収縮させ、バンドギャップエネルギーを減少させれば、赤色度が大きくなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、前年度に合成したBi4Zr3O12について、赤色顔料として最も鮮やかな発色を示すように、構成元素や組成を最適化する。最適化された新規顔料について、その構造および発色機構を明らかにするために、X線光電子分光測定により、顔料を構成するイオンの酸化状態を明らかにすると共に、ラマン散乱分光光度計、赤外分光光度計により分光学的性質を評価する。さらに、各顔料粒子の1次粒子径、2次粒子径、ならびに粉体の形状を透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡により観察、評価し、これらが発色に及ぼす影響を明らかにする。 得られた知見を新規赤色無機顔料の合成にフィードバックし、赤色純度(原色性)を向上させ、より鮮やかな色彩を有する優環境型無機赤色顔料を創製する。
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Research Products
(3 results)