2015 Fiscal Year Research-status Report
異方性構造を有するガラス材料の物性測定と非晶質構造解析
Project/Area Number |
15K05646
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
紅野 安彦 岡山大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90283035)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 異方性ガラス / 構造解析 / 分子動力学法 / 構造モデル化 / リン酸カルシウム / 弾性率測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、非晶質構造解析に基づく構造異方性の評価、弾性率測定に基づく物性異方性の評価、および、異方性ガラスの構造モデル構築を主要な実施項目とし、平成27年度においては、分子動力学シミュレーションによる伸長ガラスの構造モデル構築、ならびに、共振法弾性率測定系の構築に取り組んだ。 分子動力学シミュレーションでは、これまでの予備検討において実施経験のあるカルシウムリン酸塩ガラスを対象とし、メタリン酸カルシウム(50CaO-50P2O5)を挟む近傍組成において、仮想的な伸長処理による異方構造形成と諸条件との関係を調査した。溶融により均一平衡化した後、冷却過程にて一軸引張応力を印加し、アスペクト比2または4となる変形を与えた直後に冷却して異方性ガラスの構造モデルとした。PO4四面体のQ2単位に加えてQ1過剰、Q3過剰領域となるメタ組成以外のガラス組成においても異方性構造が凍結し、P-O鎖が配向した異方性ガラスの構造モデル構築が可能であることを確認した。また、ガラス組成変化に伴ってガラスの熱特性も変化することから、誘起される構造異方性の比較には伸長処理の温度や印加応力等の条件を検討する必要があることが示唆された。Qn分布を意図的に操作したガラスについては検討中である。 一方、材料の物性異方性を計測することを目的として、共振法による弾性率測定系の構築を進めた。スペクトラムアナライザを新規に導入し、既存の任意波形発生器および圧電トランスデューサと組み合わせて測定系を構成した。正弦波の周波数掃引、あるいは、必要とするスペクトル帯域を含むホワイトノイズ波形の導入、いずれの手法においても等方性ガラス試料の共振スペクトルを得ることができ、周波数分解能と共振モードの信号強度が十分であることを確認した。異方性試料を使用することにより、材料弾性の異方的な評価が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、予定していた2つの実施項目、伸長ガラスの分子動力学構造モデル構築と共振法弾性率測定系の構築に取り組み、各々について概ね達成した。前者において、当初予定していたQn分布を意図的に操作したメタリン酸カルシウムガラスに関する検討中であるが、次年度の実施項目として最優先して計画実施中であり、概ね順調に進展しているものと判断した。 弾性率測定系の構築に続いて、異方性ガラス試料の作製および物性異方性の評価を慎重にすすめる必要性があるとの判断から、放射光施設SPring-8を利用した構造解析実験は、前倒しで実施しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
異方性ガラスの分子動力学構造モデル化を継続して実施することにより、伸長あるいは圧縮処理に関わる諸条件と構造異方性との関係を明らかにすると同時に、典型的な単純組成酸化物ガラスを対象として異方性ガラスの作製と物性異方性の評価を行う。そのために、平成28年度より研究協力者を1名加え、研究代表者と大学院生2名の体制で今後の研究を推進する。 上記の研究実施体制にて効率的に研究推進するために、構造シミュレーション実験および測定解析に必要となる計算機資源を増強する予定である。
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Causes of Carryover |
弾性率測定系の構築において、測定プローブ部分の作製に既存物品を有効活用することにより物品購入の必要が無くなったため、次年度使用額が生じた。ただし、当該測定プローブは試作段階であるため、研究の進捗の伴って改良と改変を行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において、弾性率測定系を利用した測定試験を進め、実際の使用段階で生じた諸問題の解決に伴い、測定プローブの改良と改変に必要な物品の購入に使用する予定である。
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