2016 Fiscal Year Research-status Report
赤外線を可視光へ変換するセラミック蛍光体の高変換メカニズムの解明
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15K05648
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
渡 孝則 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10136541)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | アップコンバージョン / 蛍光体 / 酸化亜鉛 / 酸化チタン / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化チタンゾル溶液、酸化亜鉛微粉末、硝酸エルビウム(Er)、硝酸イッテルビウム(Yb)を原料とし、TiO2:ZnOの混合比、硝酸塩の濃度、を変化させ、加熱することにより発光体を合成した。800℃では未反応酸化チタンが認められたが、加熱温度を高くするに従い反応が進行し、1300℃で発光相であるZn2TiO4と副生相であるRe-Ti酸化物が共存した。1350℃以上では溶融した。また、生成物の発光強度を測定した。発光強度は1000℃以上で加熱温度の上昇と共に増大し、1300℃で最大となり、1350℃以上で低下した。これより最適合成温度が1300℃であることが分かった。ZnO/TiO2比(x)を変化させたところ、発光強度は、0.25~1.0ではx値の増加と共に増大したが、1.0~1.75ではx値の増加と共に低下した。これより、最適配合比は1.0であることが分かった。Er添加量を変化させたところ、発光強度はEr=0~3mol%ではEr添加量の増加と共に増大したが、3~5mol%では低下した。これより最適Er添加量は3mol%であることが分かった。前者の理由はErイオンが発光元素であるためであり、後者の理由はErが高濃度となるためにEr同士でのエネルギー移動が起こり、発光しなくなるためである。Yb添加量を変化させたところ、発光強度はYb=0~9mol%ではYb添加量の増加と共に増大したが、9~12mol%では低下した。これより最適Er添加量は9mol%であることが分かった。Ybイオンは照射光を吸収しErイオンへ移動する役割をするので、前者の理由はYb濃度が高くなったこと、後者の理由はTb同士でのエネルギー移動のためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原料にナノ粒子を用いたアップコンバージョン蛍光体の合成に成功し、最適合成条件(加熱温度、ZnO/TiO2の最適混合量、Er及びYbの最適添加量)を見出した。また、これらの最適条件の理由について提案することができた。以上の点は高く評価できる。ただし、X線回折による結晶構造解析が思うように進行できなかった。この理由は、研究過程で想定していた結晶相以外の結晶相が共存することが分かり、この結晶データが不足したためである。この結晶を考慮しない解析や推定データを用いた解析を試みたが、信頼性の低い値しか得られなかった。 電子エネルギーソフトによる解析においては結晶データの信頼性が低く、ソフト使用料に見合う結果が得られないと考え、実験費として使用した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)発光元素である希土類金属イオンの最適添加量が数桁も異なる理由を解明するための文献調査および共添加実験を行う。 (2)計画通り、リチウムイオンおよびホウ素イオンの添加効果を調べる。 (3)ZnO-TiO2系アップコンバージョン蛍光体を総括し、まとめる。
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Causes of Carryover |
基礎データ不足のため信頼性のある結果が得られないと判断したアップコンバージョン計算ソフトの借用を止めたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験費、文献調査費、学会発表旅費、論文投稿費などに使用
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