2015 Fiscal Year Research-status Report
微量元素添加による粒界制御とイオニクスデバイスの効率化
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15K05649
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
嶺重 温 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285339)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオン伝導体 / 燃料電池 / アパタイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、放射光マイクロビームを用いたFeドープランタンシリケート(LSO)の粒界構造の観測に成功した。具体的には大型放射光施設SPeing-8、BL24XU兵庫県ビームラインにおいて、ゾーンプレートを用いて数100 nmサイズに集光したX線を用い、LSO試料の蛍光X線マッピングと透過X線回折の同時測定を実施することによって、材料内のFeの分布状態の観測と偏在する微量のFe含有相の検出が可能となった。この手法を用いれば、本材料系に限らず多くの結晶材料系において微量不純物の存在状態解明につながるものと期待される。 今年度得られた具体的な成果として、本手法を用いることで、ラボのX線回折測定では単相と判断されたLSO試料に僅かに第二相が偏在する領域があることが明らかとなった。この相の同定を現在行っているところであるが、La3FeO6相である可能性が高いと考えられる。我々は、鉄を添加したLSO試料において化学的安定性が向上するということは既に報告しているが、試料の粒界部分にLa3FeO6相がわずかに存在することにより、粒界の安定化がはかられていた可能性が高いことが示された。イオン伝導性の向上の観点から、LSOのLa活量をなるべく高めることが望ましいが、そのような試料では粒界にLa2O3相が析出しやすい。La2O3相は大気中の水分等と反応しやすく、材料の化学的安定性を低下させるが、添加した鉄がこの相と反応してLa3FeO6相を生成することで粒界を安定化していることが本研究によりはじめて示された。以上、鉄添加により高い導電性と化学的安定性を備えた電解質の作製に成功したことから、今後この電解質を用いた燃料電池の構築と劣化解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、第一の目標である放射光マイクロビームを用いた蛍光X線マッピングと透過X線回折の同時測定手法の確立と、この手法を用いた材料内のFeの分布状態の観測と偏在する微量のFe含有相の検出が可能となった。一方、イオン伝導特性評価についてはインピーダンス装置の故障で修理に時間を要しているため、進捗に遅れが見られる。次年度に継続して検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度確立した測定を継続して実施して、最適な粒界構造を持つ電解質を完成させる。また同時並行で実施している電極材料開発の成果と組み合わせて高性能燃料電池を構築し、性能評価を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
放射光施設での測定のための放射線安全講習を4月に受講する必要があるため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験参加者の放射線安全講習受講費ならびに交通費
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[Presentation] ランタンシリケート系電解質の粒界構造観察2016
Author(s)
早川 光, 嶺重 温, 西本 琢磨, 平郡 章絵, 矢澤 哲夫, 篭島 靖, 高野 秀和, 竹田 晋, 吉岡 秀樹
Organizer
電気化学会第83回大会
Place of Presentation
大阪大学吹田キャンパス(大阪府吹田市山田丘2-1)
Year and Date
2016-03-29 – 2016-03-31
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