2015 Fiscal Year Research-status Report
固溶体結晶化ガラスの局所フォノンと結晶場制御による太陽光励起レーザ媒質の高効率化
Project/Area Number |
15K05651
|
Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
鈴木 健伸 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60367828)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 透明結晶化ガラス / 太陽光励起レーザ / ファイバレーザ / 局所フォノン制御 / 結晶場制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は高い効率でクロムからネオジムへのエネルギー移動が可能な太陽光励起ファイバレーザ媒質を作製することである. レーザー結晶ホストにネオジムと共にクロムを添加するとクロムが太陽光を吸収し,そのエネルギーをネオジムにわたし,ネオジムがレーザー発振するクロムの増感作用が知られている.ガラスホストでは,クロムが多重フォノン放出することでエネルギーを失うことと,クロム-ネオジム間のエネルギー準位のミスマッチのためにクロムの増感作用の効率は高くない. 本研究では, 固溶体結晶を析出させた透明結晶化ガラスによってクロム近傍の局所的なフォノンと結晶場を同時に制御することでクロムの増感作用を高め, 効率の高い太陽光励起ファイバレーザ媒質を創製することを目的とする. 本年度は,シリケートを主成分とする種々のガラス組成について,溶融急冷法によりガラスを作製し,その後に熱処理することで結晶化させた結晶化ガラスを作製した.適切な条件の結晶化処理を施すことで,熱処理後も透明性を保った透明結晶化ガラスを作製することができた.クロムを添加すると熱処理前のガラスはほとんど発光を示さないのに対して,熱処理後の結晶化ガラスのクロムからの発光強度は著しく増大することが確認できた.これはクロムが透明結晶化ガラス中の結晶相に添加されたことと,結晶化処理によりクロム近傍の局所的な有効フォノンエネルギーが減少したことを示唆している.一方,ネオジムについては結晶化処理により発光スペクトルの形状,強度,発光寿命などの特性は大きく変化しなかった.このことから,ネオジムが結晶化ガラスの結晶中に存在するのかガラスに存在するのかは明らかではなく,クロムとネオジムが同時に結晶中に添加された透明結晶化ガラスを作製することが,次年度の課題として残った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,クロムとネオジムを共添加することが可能な透明結晶化ガラスの組成および作製条件の探索に注力した.また,結晶化によるクロム近傍の局所的なフォノンの変化について調査した.本年度,検討したガラス組成では,ガラスの熱処理により透明結晶化ガラスが得られた.結晶化処理により,クロムの発光が増大することが見られ,クロムが透明結晶化ガラス中の結晶相に添加されたことが確認でき,また,結晶化処理によりクロム近傍の局所的な有効フォノンエネルギーが減少したものと考えられる. 以上から,おおむね当初の計画に沿ったスケジュールで研究は進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
ネオジムについては,結晶化処理による明確な発光の増大等の変化は見られず,透明結晶化ガラス中のガラス相と結晶相のいずれに存在するのかは明らかにしていない.次年度は,クロムとネオジムを共添加した透明結晶化ガラスを作製条件の最適化をはかりとともに,結晶相に効率的にクロムとネオジムが取り込まれる透明結晶化ガラスを作製する.また,結晶化処理によるクロムの非発光緩和の抑制のメカニズムを明らかにするため, クロム近傍の局所フォノンエネルギー, 電子-フォノン相互作用係数と非発光緩和率の関係を調べる.クロムの結晶場の制御によるクロムからネオジムへのエネルギー移動効率の向上と, 結晶化に伴うネオジムの発光の不均一広がりの抑制による発光のレーザ発振の低閾値化が可能な透明結晶化ガラスを作製する.
|
Research Products
(4 results)