2015 Fiscal Year Research-status Report
モノアルキル鎖の棒状液晶分子を活用した高品質な有機トランジスタ材料の開発
Project/Area Number |
15K05662
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯野 裕明 東京工業大学, 像情報工学研究所, 准教授 (50432000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶性有機半導体 / モノアルキル鎖構造 / バイレイヤー構造 / アニール |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的であるモノアルキル鎖構造を有する棒状液晶材料の高移動度化の要因を調べるために、当該年度ではモデル材料であるフェニルベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体(Ph-BTBT-10)のバイレイヤー間のトランスファー積分の評価、熱アニールによる分子配向の秩序および結晶性の評価を行った。 Ph-BTBT-10のトランスファー積分の評価では、単結晶の構造解析で明らかになった結晶構造よりトランスファー積分の評価を行った。レイヤー内のπ-πスタキング方向のトランスファー積分だけでなく、Ph-BTBTコアが向かい合ったバイレイヤー間に関しても、通常の材料ではトランスファー積分はゼロになるところ、Ph-BTBT-10のバイレイヤー構造では数meVの有限な値を示した。このように、モノアルキル鎖構造の誘導体が電荷輸送部位となるコア部(ここではPh-BTBT環)が向かい合うバイレヤー構造になることで電荷輸送パスが増加したことが高移動度化の一つの要因であることが示唆された。 実際の薄膜においても、熱アニールにより配向性や結晶性の改善により、高移動度化したことも低角のXRDより明らかになった。80℃以上の熱アニールを行うことでモノレイヤー構造からバイレイヤー構造に変化すること、さらにそのバイレイヤー構造に対応するXRDピークの強度の増加、半値幅の減少が明らかになった。この熱アニール条件を変えた薄膜を用いたトランジスタを作製したところ、バイレイヤー構造のピークが明確に表れる(強度が増加し、半値幅が減少していくる)条件において、移動度が増加してくることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標の一つであった、高移動度化の要因の解明に関しては、その可能性を示すことができた。また、熱アニール条件により低角XRDの変化と移動度の相関が取れ、ほかの材料を評価する手段も確立できた。現在、アルキル鎖長を変化させた他材料の合成が進み、その評価も徐々に進んでいる。そのため、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、他材料の検討を行い、本研究の主題の一般性を明らかにしていく。具体的には、Ph-BTBT誘導体の置換位置を変えた材料や、フェニルターチオフェン、クオーターチオフェンといった誘導体を合成し、その液晶相の有無から、結晶構造、電気特性評価を進めていくことで、研究の主題である高移動度化を実現する手法としてのモノアルキル鎖構造を有する棒状液晶材料の有用性を示していく。今後、新規なモノアルキル鎖の誘導体を合成する課題があり、来年度以降、人件費を計上していくことで対応していく。
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Causes of Carryover |
当初の目的に比べ特性評価に関しては、既存のXRD装置を用いて評価を行うことに成功した。一方で次年度以降の検討課題である、新規材料作製に関しては、有機合成を専門とする研究員の力が必須であり、その人件費として利用を行いたいため次年度への使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たなモノアルキル鎖を有する液晶性有機半導体の合成のために、人件費としての利用を計画している。
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