2015 Fiscal Year Research-status Report
損傷を考慮した異方性弾塑性構成式とその発泡金属材料の変形過程への適用
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15K05672
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
長岐 滋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30135959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大下 賢一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60334471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発泡金属 / 損傷テンソル / 損傷力学 / 弾塑性構成式 / 異方性Gursonの降伏関数 / 変形解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
内部に多数の空孔を有する発泡金属は,衝撃緩衝材としての用途や軽量化を目指して構造材料として用いること等が検討されているが,実用化に際してはその変形過程のシミュレーションを正確に行う必要がある.しかしながら実材料の内部に非常に多数存在する個々の空孔を直接考慮した変形解析を行うことは,計算コストの点で実用的ではない.本研究では個々の空孔の分布を損傷テンソルと呼ぶ連続変数の分布に置き換えて表現し,空孔が成長していく過程を損傷テンソルの発展式として記述する手法を開発し,より実用的な発泡金属の変形過程のシミュレーションを行うことを目的としている. 従来より研究代表者らは損傷テンソルを導入した異方性Gursonの降伏関数を用いた変形解析手法を提案しているが,本年度はこの手法を発泡金属に適用することを試みた.すなわち発泡金属材(ADC12アルミニウム合金)の空孔の分布状態をX線CT装置用いて同定し,CT画像から損傷テンソルを求める方法を新たに構築した.得られた損傷テンソルの分布を用いて,内部に多数の空孔が存在する引張り試験片の3次元弾塑性有限要素解析を行った.その結果,従来法(空孔の存在を直接考慮した有限要素法解析)に比べて本手法でははるかに少ない要素数で試験片内部の応力集中などを計算できる可能性を確認した. また,空孔の成長挙動に関しては,アルミニウム合金材を用いた穴あき薄板の引張り試験を行って2次元的な空孔の成長挙動を観察した.これより変形に伴う損傷テンソルの変化は異方性Gursonの降伏関数をもとにした発展式によって表すことができ,この傾向は材料によって大きな差が無いこが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は理論面では損傷テンソルの発展則の導出・改良を行い,実験面では発泡金属試験片の試作と引張り試験による空孔の変形状態の観測を行う計画であった.しかし,発泡金属材料の引張試験と変形中の内部の観察については,使用予定であったCT装置が組み込まれた引張り試験装置(東京大学生産技術研究所所有)が故障して使用不能となったことから実施できず,これらに関しては次年度以降に繰り延べることとした.それに代わり本年度ではH28年度実施予定であった3次元有限要素解析手法の開発を前倒して実施した. 具体的には,研究協力者である芝浦工業大学の宇都宮教授,群馬大学の半谷准教授から発泡金属材料のCT画像の提供を受け,それをもとに発泡材の変形手法の構築を試みた.提供を受けた発泡金属素材はアルミニウムダイキャスト,純アルミニウムの2種類で,それぞれ直径15mm,長さ50mm程度の円柱状材のCT画像である.まずCT画像から材料内部の空孔の形状を抽出する手法,ならびに損傷テンソルを計算する手法を構築した.さらに市販の有限要素法アプリケーションにユーザーサブルーチンを付加することによって3次元の等方損傷発展則を組み込み,CT画像から得られた損傷テンソルの分布を用いて,空孔の存在を損傷テンソルに置き換えた有限要素法解析手法を構築した.この手法によって得られた損傷テンソルの分布を用いて,引張り試験片の3次元弾塑性有限要素解析を行った. さらに,損傷テンソルの発展則に関しては,アルミニウム合金材を用いた穴あき薄板の引張り試験を行って2次元的な空孔の成長挙動を観察した.得られたた実験結果と以前に実施したSUS304材に関する同様な実験結果から,変形に伴う損傷テンソルの変化は異方性Gursonの降伏関数から得られる発展式によって表すことができ,この傾向は材料によって大きな差が無いこが示された.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施できなかった発泡金属材料の引張り試験とCT装置による内部観察を行う.当初予定していた装置が故障で引き続き使用できない可能性があり,他の公立研究施設のX線CT装置を借用することも視野に入れて準備を進める予定である.様々な空孔分布形態の発泡金属試験片を作成し引張り試験を行い,単軸応力状態のもとにおける試験片の変形と空孔の成長状態を観察する(試験片の作成には高度な技術が必要であり研究協力者と協力して行う予定である).なおCT撮影によっては十分な精度で変形計測ができない場合には,多数の試験片を用意して各変形段階において切断によって空孔の変形を測定する. またCT画像から材料内部に分布する空孔の形状を抽出し損傷テンソルを計算する手法についてはH27年度に構築しているが,現状では空孔形状が球形状から極端にかけ離れている場合や,隣り合う空孔の直径が大きく異なる場合などには,形状の抽出が不完全になる問題があり,また全体に計算に時間がかかっている.これらの問題点についてプログラムの改良を進める. 単軸応力状態(引張り試験)の結果をもとにして,発泡金属材料の引張り・ねじり2軸負荷用の試験片を作成し,実験環境を整備する.引張・ねじり2軸応力の種々の応力比のもとで空孔の成長挙動を計測し,提案する損傷発展則と比較検討し,損傷発展則における材料パラメーターの同定方法についても検討する.さらに発泡金属材料で切欠き試験片を作成し,応力勾配が存在する場合の変形・破壊挙動についても観察する. 上述の様々な応力状態,試験片形状について行った実験により得られた変形測定結果を,空孔の成長過程を考慮した構成式を組み込んだ有限要素法を用いたシミュレーション結果と比較検討を行うことによって,策定した目標の達成を目指すとともに,得られた結果を総合して研究成果の発表を行う.
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Causes of Carryover |
本年度は使用予定であったX線CT装置付きの引張り試験装置が故障したため,発泡金属材料の引張り試験を実施しなかった.このため試験片作成のための支出を行わなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初借用を予定していた東京大学生産技術研究所所有のX線CT装置は故障修理の見通しが立たないため,他の公設施設のX線CT装置を借用する予定である.発泡金属材料から引張り試験片を製作し,当初の予定通り引張り試験を行って空孔の変形状態のCT観察を行う.
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Research Products
(2 results)