2015 Fiscal Year Research-status Report
シリカ膜マイクロカプセルを用いた自己修復性炭素繊維強化ポリマーの開発
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15K05683
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
真田 和昭 富山県立大学, 工学部, 准教授 (20363872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 正浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90357921)
北條 正弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究員 (60371100)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ショートビームせん断試験 / 複合材料 / マイクロカプセル / 開繊炭素繊維 / カーボンナノチューブ / グラフェン / 層間引張・せん断強度 / 自己修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、修復剤を内包した耐熱性の高いシリカ膜マイクロカプセルと、炭素繊維ストランドを空気で広げてポリマーの含浸性を改善した開繊炭素繊維ストランドを組み合わせることで、強化繊維の間隙にシリカ膜マイクロカプセルが均一配置する微視構造を形成した、自己修復性を有する炭素繊維強化ポリマー(CFRP)積層材料の開発を目指した研究を行うものである。本年度に得られた結果を要約すると以下の通りである。 (1)シリカ膜マイクロカプセルの合成試作を行った。合成時の撹拌速度を制御することにより、平均粒径3~5μm程度と平均粒径15~35μm程度のシリカ膜マイクロカプセルを得ることができた。また、得られた平均粒径20μm程度のシリカ膜マイクロカプセルと修復剤(ジシクロペンタジエン)を混合し、真空中に放置すると、修復剤がシリカ膜マイクロカプセルに吸収されることを確認した。 (2)ポリマー膜マイクロカプセルを用いた自己修復CFRP積層材料の見掛けの層間せん断強度と修復率に及ぼすマイクロカプセルの質量分率・粒径の影響を検討した。平均粒径50μmのマイクロカプセルを用いた積層材料の見掛けの層間せん断強度と修復率は、平均粒径120μmのマイクロカプセルの場合に比べて増大した。また、マイクロカプセル質量分率の増大に伴い、積層材料の見掛けの層間せん断強度は低下するが、修復率は増大した。 (3)ポリマー膜マイクロカプセルを用いた自己修復CFRP積層材料の見掛けの層間せん断強度と修復率に及ぼすカーボンナノチューブ(CNT)・グラフェン(GE)添加の影響を検討した。マトリックス中に遊星式ミキサーを用いてCNT・GEを添加した場合、CNT・GEの凝集体が起点となる局所的なき裂が多数発生したため、見掛けの層間せん断強度および修復率が低下する傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、シリカ膜マイクロカプセルの合成試作を行い、合成時の撹拌速度とマイクロカプセル粒径の相関を見出すことができた。また、合成したシリカ膜マイクロカプセルが真空中で修復剤を吸収していることも確認できたため、このマイクロカプセルを用いて自己修復CFRP積層材料を作製し、層間せん断強度・修復率を評価する準備が整った。一方、ポリマー膜マイクロカプセルを用いた自己修復CFRP積層材料を対象に、ショートビームせん断試験を実施し、層間せん断強度・修復率に及ぼすマイクロカプセルの粒径・質量分率およびナノ材料添加の影響も一部評価が完了しており、シリカ膜マイクロカプセルを用いた自己修復CFRP積層材料へ得られた知見を展開することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、今年度に得られた結果と明確になった課題を鑑み、以下の方策で推進する。 (1)シリカ膜中空カプセルを作製し、これに外部から修復剤を注入する加工プロセスを確立して、自己修復機能を発現させるためのシリカ膜マイクロカプセルを開発する。 (2)シリカ膜マイクロカプセルと開繊炭素繊維ストランドを用いた自己修復CFRP積層材料を対象に、層間引張・せん断試験を行い、層間引張・せん断強度と自己修復効果に及ぼす内部微視構造(シリカ膜マイクロカプセル粒径等)の影響を明らかにする。また、得られた結果とポリマー膜マイクロカプセルを用いた結果を比較し、優位性を検証する。さらに、マトリックスとして用いるエポキシ樹脂とグラフェン等のナノ材料との複合化技術を確立し、自己修復CFRP積層材料のさらなる初期特性向上を図る。 (3)自己修復CFRP積層材料を対象に、衝撃後圧縮(CAI)試験と超音波探傷法による内部損傷観察を行い、衝撃後圧縮強度と自己修復効果に及ぼす内部微視構造の影響を明らかにする。 (4)自己修復CFRP積層材料を対象に、有限要素法を用いた層間引張・せん断試験に関する損傷進展解析を行い、シリカ膜マイクロカプセルが効率良く破壊する内部微視構造を明らかにして、高性能な自己修復CFRP積層材料の設計指針を見出す。
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Research Products
(5 results)