2016 Fiscal Year Research-status Report
アルミナ含有率の異なるアルミナ粒子分散マグネシウム粉末による積層成形体の開発
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15K05688
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
川森 重弘 玉川大学, 工学部, 教授 (80307165)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メカニカルミリング / アルミナ分散マグネシウム / 放電プラズマ焼結 / 積層成形 / 反応相 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】Al合金を凌ぐ軽量かつ強度を有するMg複合材料を開発するため、Al2O3含有率の異なるAl2O3/Mg粉末を積層成形することを提案した。手始めとして、昨年度では、高い硬さを有する20vol%Al2O3/Mg粉末と最も軽量な0vol%Al2O3/Mg粉末との積層成形体を試作 し、その特性について調査した結果、Al2O3含有率の異なるAl2O3/Mg粉末を組み合わせて積層成形体を作製することで、機械的性質の高い20vol%Al2O3/Mg粉末のみの成形体以上の比硬度・比強度を有する成形体を試作できた。また、20vol%Al2O3/Mg層とMg層の間に反応相が形成しており、この相が機械的性質に良い影響をおよぼしていることが分かった。 そこで、最も比硬度・比強度の高かった20vol%Al2O3/Mg層とMg層の体積比が1:4の成形体における反応相の影響について調査した。 【実験方法】Mg粉末にAl2O3粒子を含有率0および20vol%で混合し、アトライタ型ボールミルにてAr雰囲気中、アーム回転数300rpm×50hでミリング処理して得られたAl2O3/Mg粉末を所定の重量秤量後、油圧プレス機にて、同じカーボンダイス中で各々圧粉処理し、放電 プラズマ焼結(SPS)装置を用い、Ar雰囲気中、昇温速度100℃/min、焼結温度575℃、加圧力40MPa、保持時間10minにて焼結した。焼結体をエメリー・バフ研磨で一定厚さに整えることで、20および0vol%Al2O3/Mgの体積比が1:4になるように調整し、Al2O3/Mg積層成形体を試作した。 【成果】Al2O3/Mg積層成形体には約40μmの均一な幅を持った反応相が生成しており、各相との密着性も良好であった。反応相のマイクロビッカース硬さ分布を調べた結果、20%層から0%層に向かって硬さがほぼ直線的に低下していた。また、EDSによるMg,AlおよびOnの線分析結果から、反応相では、AlとOが存在し、20%層から0%層に向かって、Mgが減少していた。以上のことから反応相は、Al2O3から分解したAlとOがMgと反応して傾斜的にMg17Al12とMgOが生成していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度の研究計画では、Al2O3含有率50,40,30,20,10,20,30,40,50 vol%の順にカーボンダイスに各予成形体を入れるため,焼結後の各厚さを20~50vol%は上下各0.1mm,中央の10vol%は1.2mmとし,全体厚さが2.0mmとなるように予成形体作製時の粉末量を調整する予定であったが,問題が生じた. 手始めに,20vol%と0vol%の体積比が1:4になるように,20,0,20vol%の順に積層した成形体を作製するため,厚さ0.14mmの予成形体を作ろうとしたが,粉末量が少ないため,厚さが均一な良好な予成形体の作製が困難であった.また,予成形体を作製できても,非常 に薄く,脆いため取り扱いが難しかった. そこで,予成形体は作らず,同じカーボンダイス中に,順次粉末を入れ,その都度圧粉した.また,20vol%の層は,粉末が少ないため,均一な厚さにすることが難しいため,粉末量を多めにし,積層成形SPS体を作製後に,研磨紙で表面を削ることで,厚さを整える 方法に変更した.そのため,当該年度行う予定の,多層成形体を作製することはまだできていない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を以下に示す. 当該年度に作製予定であったアルミナ分散マグネシウム(Al2O3/Mg)多層成形体を作製する.各層の厚さを0.1mmかつ均一な厚さにするために,焼結時に揮発する脂肪酸の粉末を各粉末に添加・混合する方法を行う.得られたAl2O3/Mg多層成形体は用途として,自動車エンジン部品を想定していることから,耐摩耗性,耐熱性(高温力学特性や高温酸化性)の評価は必須であり,積層成形体の摩耗試験,高温硬さおよび高温引張試験,高温酸化試験を行う.特に,表面の高Al2O3含有率部分の特性を評価する.試験温度は,最高で500℃までとする.具体的には次のとおりである. 1.エンジン内環境雰囲気や温度,そのときの摩耗状況を詳細に調査し,摩耗試験条件を検討後,摩耗試験を行い,試験時間と摩耗量の関係などを計測する.その結果を実用Mg合金やAl合金と比較考察する. 2.摩耗試験同様に実際の雰囲気および温度にて,高温硬さおよび高温引張強さを調査する.試験雰囲気や試験温度と硬さおよび引張強さ・破断伸びの関係を調査し,実用Mg合金やAl合金と比較考察する.さらに,実際の雰囲気および温度にて,高温酸化試験を行い,試験温度・酸化時間と酸化量の関係を計測する.その結果を実用Mg合金やAl合金と比較考察する. 3.Al2O3/Mg多層成形体の高温での機械的性質や酸化挙動と組織の関係について,走査型電子顕微鏡(SEM),X線回折装置(XRD),透過型電子顕微鏡(TEM)およびエネルギー分散X線分光装置(EDS)を用いて調査後,その考察から積層成形条件を検討し,高温での機械的性質や耐食性の向上を図る.
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Causes of Carryover |
国際会議に参加する予定で、40万円旅費を計上していたが、学内業務多忙のため、参加できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度7月に国際会議に参加することが決まったので、そこで使用する予定である。
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