2015 Fiscal Year Research-status Report
原子拡散誘起による金属疲労き裂治癒技術の開発と治癒メカニズムの解明
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15K05694
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
細井 厚志 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (60424800)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | き裂治癒 / 疲労 / 金属 / き裂進展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において,熱制御を行うことで疲労き裂治癒を行い,疲労損傷治癒メカニズムを解明することを試みた.オーステナイト系ステンレス鋼を対象とし,熱処理条件が疲労き裂治癒効果に及ぼす影響を評価し,以下の結果を得た. 1.真空中で固溶化処理温度まで加熱し急冷することにより,疲労き裂を数mm治癒させることに成功した.また,き裂治癒部におけるき裂進展特性に対する修復率は約80%であった. 2.冷却速度による影響を評価するために,油冷,ガス冷,炉冷によるき裂治癒を行った.その結果,油冷におけるき裂治癒において最も高い治癒効果が得られた.ただし,油冷した際の高い治癒効果は熱残留応力における効果であることが示唆された. 3.真空度を変化させ熱処理を行ったところ,高真空で熱処理を施した試験片ほどき裂治癒後の疲労破面のディンプルが小さくなることが明らかとなり,真空度が疲労き裂治癒に影響を及ぼしていることが示唆された.これは,溶質原子である炭素が加熱により粒界を拡散しき裂表面の酸化皮膜を還元したことや,酸化皮膜の酸素が母材金属に拡散したことによりき裂表面の真性面が露出され,固相拡散が生じることでき裂が治癒されたものと示唆された. 4.オーステナイト系ステンレス鋼においてガス冷及び油冷における冷却過程時に試験片にかかる応力状態を定量的に評価するために有限要素法にて熱応力解析を行った.その結果,冷却速度が大きい油冷において,冷却過程で高い圧縮応力が試験片に付与されることが明らかとなり,き裂治癒効果が向上したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初計画した通りに研究を進めらているため。
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Strategy for Future Research Activity |
熱処理過程に及ぼす真空度が疲労き裂治癒に影響を及ぼすことが示唆された.これはき裂治癒熱処理過程において,溶質原子である炭素によるき裂表面の酸化皮膜の還元と,酸化皮膜の酸素の母材金属への拡散が真空度に影響されることが原因と考えられる.そこで,き裂治癒熱処理過程における真空度,加熱温度,保持時間をパラメータとして,き裂治癒前後のき裂表面やき裂治癒過程における材料表面の酸化皮膜の厚さや成分,原子濃度分布をオージェ電子分光法,X線回折にて定量的に評価する.また,接合界面の性状を後方散乱電子回折や透過型電子顕微鏡を用いて実験的に評価する.これによりき裂治癒に及ぼす酸化皮膜の影響を評価し,き裂治癒に及ぼす影響因子を明らかにすると共にき裂治癒条件の最適化を図る.
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Research Products
(2 results)