複合溶射粉末とコールドスプレー法による高生体親和性インプラントの創成

2015 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K05695
• Research Institution: Niigata Institute of Technology
• Principal Investigator: 山崎 泰広 新潟工科大学, 工学部, 教授 (70291755)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 生体材料 / コールドスプレー / 低弾性 / 生体適合性

Outline of Annual Research Achievements

超高齢化社会を迎えた我が国においては，疾病や事故により生じた生体機能の低下・欠損を人工的に回復する生体機能再建術の高度化がこれまで以上に必要となっている．再生医療発展の観点からのみならず国内産業の活性化のためにも，優れた性能と信頼性を有するインプラント材料を我が国独自の技術として開発することが強く期待されている．
本研究は，生体親和性と生体適合性に優れ，高い強度特性を有するインプラント材料を開発することを目的とする．その手法として，複合溶射粉末製造技術とコールドスプレー技術を用いて，生体親和性を確保するためハイドロキシアパタイト（HAp）を微細均一分散させ，生体適合性を確保するため多孔質化を図り低弾性率化したチタン皮膜を高密着強度でチタン合金基材に成膜する技術を開発することを目的とする．
上記の最終目的を達成するため，H27年度は，1) 高HAp複合率の複合粉末の開発するとともに，2) マルチスケール解析により多孔質皮膜の力学特性と気孔組織との関連性を明らかにし，3) せん断負荷に対する界面強度をSEM内でIn-situ観察しながら評価できる新しい試験法を開発した．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

H27年度は，1) 複合粉末の開発，2) 多孔質皮膜の力学特性解析，3) 新規界面強度評価技術の開発，を行った．1) 複合粉末の開発は，HAp複合率10%および15%の高複合粉末の開発に成功し，コールドスプレーによる皮膜成膜を実施している．2) 多孔質皮膜の力学特性解析は，マルチスケールシミュレーション技術を援用して多孔質皮膜の力学特性を解析し，溶射皮膜特有の扁平した気孔組織と力学特性の関連性を明らかにするとともに， 皮膜の異方性弾性特性の予測式を開発した．さらに，せん断負荷に対する界面強度をSEM内でIn-situ観察しながら評価できる試験法を開発するとともに，実験装置を試作した．
1) 複合粉末の開発では，チタン原料メーカーの爆発事故が発生したため，数ヶ月間，国内でチタン原料の入手が困難な状況が続き，複合粉末の開発までは進めたものの，コールドスプレーによる成膜の完了と，その後の評価試験を実施するまでに至らなかった．そこで．2) 多孔質皮膜の力学特性解析と3) 新規界面強度評価技術の開発については，当初予定を前倒しして実施し，これらの内容については計画以上の成果を得ることが出来た．

Strategy for Future Research Activity

コールドスプレーによる成膜を完了し，早期に複合粉末皮膜の力学的特性を評価するとともに，組織学的検討を実施する．特に，皮膜の力学的特性および組織学的特性に及ぼす成膜後熱処理条件の影響に注目し，高生体親和性と高強度特性を両立した皮膜の開発を目指す．また，得られた結果と，H27年度実施した解析結果を比較しながら，開発した多孔質皮膜力学的特性評価式の高度化を行う．さらに，新規開発した界面強度評価試験技術により，皮膜と基材の界面強度を評価する．

Causes of Carryover

粉末メーカーを海外メーカーから国内メーカーに変更したこと，また，粉末原料の納入トラブルが重なったことで，粉末を無料で提供して頂けることとなり，その購入費として計上していた費用を基材の追加購入に変更することとしたため．

Expenditure Plan for Carryover Budget

基材材料の追加購入と組織評価のための研磨消耗品などの購入，成膜後熱処理などの費用として支出を予定している．また，国内外の学会において得られた成果の公表と関連研究に関する情報収集を行うための旅費を支出する予定である．