2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05705
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
古谷 佳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点 疲労特性グループ, 主幹研究員 (60354255)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 疲労 / ギガサイクル疲労 / 介在物 / 高強度鋼 / 内部き裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度鋼では介在物を起点とした内部破壊が生じ、ギガサイクル疲労(疲労限の消滅)が生じる。この場合、疲労強度を支配する主な因子は介在物寸法であることが明らかになりつつあるが、疲労強度を定量的に推定するためのモデリングは不完全である。このようなモデリングを行う際にはき裂伝ぱ支配説に基づく事が合理的であるが、き裂伝ぱ支配説を支持する具体的な証拠は得られていない。き裂伝ぱ支配説を検証するためには、内部き裂の伝ぱ挙動を観察・解明する必要がある。そこで、先の研究(科研費23760106)ではナノビーチマーク法による内部き裂伝ぱの可視化技術を確立した。本研究では、この技術を用いて内部き裂伝ぱ速度を実測してき裂伝ぱ支配説の妥当性を実証すると同時に、蓄積した過去のデータを用いて広範な材料・条件についてギガサイクル疲労の疲労寿命予測式を導出することを目的としている。 それに対して、本年度の研究計画は内部き裂伝ぱ速度の実測とき裂伝ぱ支配説の妥当性の実証を目標としていた。内部き裂伝ぱ速度を実測した結果、介在物寸法の2~3倍程度の内部微小き裂と、それより大きい内部き裂とでは伝ぱ速度が不連続的に異なることが明らかとなった。大きな内部き裂は通常のき裂と同様の伝ぱ速度を示すのに対して、内部微小き裂の伝ぱ速度はそれよりも遥かに遅く、き裂伝ぱ支配説を仮定した場合の伝ぱ速度に近い値となった。これらの結果はき裂伝ぱ支配説の妥当性を実証するものであるが、その際の対象が大きな内部き裂ではなく、内部微小き裂であることを示している。更には、モデリングの検討も行い、内部微小き裂の特異な伝ぱ挙動を表現することができるき裂伝ぱモデルの構築にも成功した。このように、本年度研究では当初目標を達成することができたと同時に、次年度以降に予定していた内容についても一部で成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究概要で述べたように、本年度の当初目標を達成することができたと同時に、次年度以降に予定していた内容についても一部で成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行の過程では、新たな発見に伴い、新たな課題が生まれることも想定される。例えば、ギガサイクル疲労では通常の疲労限は消滅しているが、本研究の結果はギガサイクル域で新たな疲労限が存在することを示唆している。さらに、新たな疲労限の存在は10^11回までの疲労試験(約3ヶ月を要する)の実施により実証できる可能性がある。疲労限の存在を確認することは、学術的にも工業的にも非常に重要である。本研究では、このような新しい課題に対しても柔軟に取組んでいく方針である。その際には、本研究で実施可能なものと次の研究で取組むべきものを仕分けし、本研究で実施可能なものについては積極的に実施していく方針である。
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