2015 Fiscal Year Research-status Report
MEMS静電駆動マイクロシャッタのマルチスリット多天体分光器応用
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15K05713
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 巧也 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門職員 (60451879)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノマイクロ加工 / 赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東京大学が南米チリ共和国アタカマ高地に建設中の大型赤外線望遠鏡に搭載予定の分光器を、MEMS技術を用いて可変マルチスリット化することを目的とする。本研究ではこれまでに、半導体シリコンマイクロマシニング技術を用いて、貼り合わせシリコン基板(SOI基板)の両面をマイクロ加工し、幅100μm、長さ1000μm、厚み1.25μmの静電駆動シャッタを製作しており、平成27年度にはこれをベースとし、シャッタ数8000のアレイ化マルチスリットを構成する予備実験として、シャッタ数3×3のサブユニットを設計、製作し、大気中、さらには真空中における静電駆動特性を測定した。その結果、シャッタ閉から開状態への駆動電圧70V~150V、開状態保持のための電圧10V~30Vが必要であることがわかった。また、シャッタを支える捻りバネの設計を変更したことにより、面内方向への回転運動を大幅に抑制することが可能となり、シャッタ開閉動作の安定性が格段に向上した。それに加えて、下部電極となる支持基板側に絶縁層を成膜する工程を追加するプロセス改良を行った結果、これまで問題となっていた、シャッタの開状態を保持したのちに電荷が蓄積されることによって稀に生じる、シャッタ‐下部電極の固着が起こり閉状態に戻らなくなる現象が発生しにくくなることも確認できた。さらに、シャッタとして遮光性能を改善するための手法としてこれまでに製作しているひさし構造の製作プロセスについても1点変更を行い、歩留まりの向上について検証しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シャッタ個別の開閉動作については格段に向上し、制御が以前よりも容易になったため、平成28年度の実施計画で予定している通り、シャッタ自身とシャッタ基板、および、ひさし基板上の3種類の静電駆動電極を用いた任意位置シャッタの静電駆動開閉動作の実現に取り掛かる段階まで進展しており、おおむね順調であると言える。ただし、本研究の静電MEMSシャッタは、最終的に分光機内の100K程度の低温・真空環境で動作することが求められているが、以前の研究費で購入したクライオ(冷却試験機)の故障が長期に及んだ為に、低温下での駆動試験まではできておらず、当初の計画以上の進展とまではいかない。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはクライオを用いて低温下でのシャッタ駆動試験を行い、ひさし構造なしでの特性評価を行う。それと平行して、ひさし構造を用いた任意位置シャッタの静電駆動開閉動作の実現に取り組み、真空中、低温下での評価を行う。
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