2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノトランスファプリントにおける表面力制御と立体構造への適用
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15K05729
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
金子 新 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (30347273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸貫 信行 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (90166463)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トランスファプリント / 表面 / 表面力 / 薄膜 / 微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ナノトランスファプリント(nTP)における表面力制御法の確立を目指すとともに,薄膜を立体構造化する基本条件を明らかにすることを目的としている.以下に平成27年度の研究実績について示す. (1)nTP装置の改良:現有するトランスファプリント装置の改良について,購入予定であった簡易型環境制御チャンバと紫外線照射装置は研究代表者が現有設備を転用できることになったため,同設備を利用するためのnTP装置の改良およびセンサ変更を行った. (2)基板の表面改質と評価:高硬度シリコーン樹脂(h-PDMS)のスタンプにプラズマ処理を行い,その表面粗さをRaで10~100nm変化させた.同h-PDMSにAuを成膜してPETへのnTPを行った.上記の表面粗さの範囲では転写率に差はなかったが,Raの大きいと薄膜の一部が剥離しながらPETに転写されることを明らかにした。PDMSやSiO2など各種表面について,濡れ性,表面自由エネルギ,表面粗さ,そして表面力の測定を行った.その結果,従来は濡れ性と相関があるとされていた表面力が,材料の組み合わせによっては全く異なる傾向を示すことがわかった.すなわち,nTPの可否や転写条件について,表面力を基本として検討すべきであることが明らかとなった. (3)転写薄膜の作製条件の検討:金属およびセラミックなどの稠密膜を対象として,スタンプ上への薄膜作製と表面性状評価を行った.金属薄膜はあらかじめ真空蒸着により密着強度の低い成膜条件で薄膜形成し,その後にスパッタ成膜で膜質のよい薄膜を作製することが,nTPにおいて転写率(構造作製率)を向上させることを明らかにした.また,セラミック薄膜はゾルゲル・低温焼成によりPDMS上で成膜すれば,nTPが可能であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,(1)nTP装置の改良,(2)基板の表面改質と評価,(3)転写薄膜の作製条件の検討の3点について進めることを計画していた. (1)については,購入予定だった設備が現有設備から転用・調達できたため,計画よりも早く進めることができた.一方で,申請者の研究室(実験室)が当初の建物から別棟へと移動となったため,その移設および調整のために約2ヶ月間は研究を停滞した.以上から,計画(1)についてはほぼ予定通りに進行した. (2)については,申請者の現有設備により各種表面の評価が順調に進めることができた.特に,表面力の評価については,当初予定していた原子間力顕微鏡ではなく,研究協力者の表面力測定装置を使用できたため,測定環境が安定で再現性の高い測定を行うことができた.そのため予定以上の多様な材料・表面を対象として研究が遂行できた.一方で,表面改質の影響調査では,使用したプラズマ処理の再現性が低く,計画していなかった処理条件の検討などを実施せざるを得なくなった.また,スタンプ形状の影響など,計画していた実験および解析の一部が達成できなかった. (3)については,上記(2)における計画の遅れを考慮し,薄膜材料と成膜条件の検討を先行する形で実施した.金属薄膜については当初計画以上に調査を進められ,同内容の成果により学術雑誌への論文発表を行うことができた.一方で,セラミック薄膜については再現性の低い結果が多かったため,その成果は国内学会での発表にとどめ,現在も研究を進めている. 以上のように,研究計画の一部に遅れや予定以上の進捗があり,結果として研究計画全体としては概ね予定通りに進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね計画通りに進んでいる.ただし,購入予定だった研究設備が現有設備で対応できたこと,また想定以上の不具合(再現性の低さなど)が生じた別設備があったことをふまえ,実験設備および消耗品の購入計画については一部変更を行うことが必要である. 一方で,申請者の所属組織内外での研究協力者により,本研究の遂行に必要不可,または研究をさらに発展させるための研究設備の使用が可能となる環境が整った.平成28年度当初は,このような研究環境をより効率的に利用するため,研究分担者および研究協力者との定期的な研究討議を行う予定である.
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Causes of Carryover |
研究計画上,購入が必要であった研究設備の一部が,現有設備からの転用が可能となった.一方で,同転用設備を本研究で使用するためには,当初計画になかった消耗品を当該年度および次年度に購入する必要が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画上,使用予定であった設備を一部変更したため,本研究で使用するナノトランスファ装置の試料取り付け部をシリコーン樹脂で実験ごとに作製する.次年度使用額は同試料取り付け部の材料費および製作費に充当する.
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