2015 Fiscal Year Research-status Report
ミクロスケール・スラリー流れ可視化観察による研磨メカニズムの解明
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15K05743
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
福田 明 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 准教授 (80643220)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スラリー流れ / 可視化 / 研磨パッド / 摩耗 / 流れの相似則 / ミクロスケール |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体デバイス製造の多くの工程で使用されている化学的機械研磨(CMP)においては、近年、半導体デバイスの更なる高性能化を実現するために、研磨メカニズムを踏まえた効率的な技術開発が重要となっている。これまでに提案されている研磨モデルでは、ウェーハと研磨パッドとの間の微細な隙間のスラリー流れによる砥粒の挙動が重要な要素であり、その解明と制御が研磨性能の向上における重要課題である。報告者らはこれまでに、研磨パッド表面を拡大した透明シリコーン樹脂製の可視化模型を作製し、流れの相似則を利用して模擬的なスラリー流れを発生させ可視化する手法を考案した。本研究では、この微細な隙間のミクロスケール・スラリー流れの可視化観察および流速分布測定手法を確立するとともに、光学的フーリエ変換に基づいて評価された研磨パッド表面についてスラリー流れを詳細に分析する。更に、研磨パッド表面形状およびスラリー流れと研磨速度との関係から、研磨メカニズムの解明に挑む。平成27年度に実施した主な研究内容を以下に示す。 (1)可視化用のシート状レーザー光源とディジタルカメラの位置関係を固定したまま3軸方向に位置決め可能なトラバース機構を設計製作した。これにより、複数断面にわたる詳細な可視化観察や流速分布測定が可能になった。 (2)ミクロスケール・スラリー流れにおけるパッド摩耗の影響について調査を開始し、孤立したパッド凸部と凹部周辺ではパッド摩耗の影響がほとんどないことを明らかにした。 (3)パッド摩耗の影響調査の過程で、ウェーハ近傍(ウェーハ表面から約15μmまで)に比べてパッド凹部の流れが非常に遅いことが明らかとなった。これより、ウェーハ近傍とパッド凹部で時間スケールを変えて可視化観察する必要があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
可視化観察において位置決め精度を良くするためのトラバース機構を設計し製作した。3軸方向に所望の精度で位置決め可能なトラバース装置が完成したが、当初の予定より時間がかかった。また、パッドの摩耗により研磨速度が小さくなるため、パッド摩耗の影響についての可視化の要望を多く頂いた。したがって、交付申請書に記載していないパッド摩耗の影響についての調査を実施し、孤立したパッド凸部と凹部ではパッド摩耗の影響がほとんどないことを明らかにするとともに、ウェーハ近傍に比べてパッド凹部の流れが非常に遅いことを明らかにした。 トラバース機構の設計製作に時間がかかったこととパッド摩耗の影響を調査したことにより進捗がやや遅れ、平成27年度途中から実施する予定であった、連携研究者が光学的フーリエ変換に基づいて評価した数種類のパッド表面形状の模型作製と可視化観察を、平成28年度から実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
予定よりやや遅れたが、光学的フーリエ変換に基づいて評価した数種類のパッド表面形状の模型作製と可視化観察を平成28年度から実施する。 なお、平成27年度の研究により、ウェーハ近傍とパッド凹部で時間スケールを変えた可視化観察が必要であることが分かったため、これまで数十秒であった可視化観察時間を1時間程度まで延長することが新たな課題である。これには、流れ発生装置を改良して長時間運転を可能にするとともに、好適なカメラの撮影時間間隔を探索して対応する予定である。研磨中に砥粒はパッド凹部から供給されると考えられており、ウェーハ表面近傍の流れを把握することに加えてパッド凹部の流れを把握することは、研磨メカニズムの解明に貢献すると考えている。
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Causes of Carryover |
トラバース機構の設計製作に当初の予定より時間がかかったこと、および当初の予定になかったパッド摩耗の影響について調査したことで、作製したパッド模型の数が当初の予定より少なかった。したがって、その分のパッド模型の材料費(3次元プリンタ用樹脂と透明シリコーン樹脂)が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、当初の予定通り光学的フーリエ変換に基づいて評価した数種類のパッド表面形状の模型作製と可視化観察を実施する予定である。パッド模型を作製するための3次元プリンタ用樹脂、透明シリコーン樹脂などを計画当初から計上しており、これに平成27年度に作製予定であったパッド模型分も併せて作製する予定である。
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