2015 Fiscal Year Research-status Report
分子間力によって生じる非接触物体間の応力解析とその次世代超高密度磁気記録への応用
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15K05764
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松岡 広成 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 茂壽 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40273883)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表面間力 / 応力分布 / 非接触状態の応力分布 / 材料分布によるせん断応力 / 材料分布による表面間力の変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、材料分布を有する表面に働く表面間応力(垂直・せん断応力)の理論を構築し、その基本特性を解明すること、およびこれを検証するための実験計測手法の確立、さらには、次世代超高密度磁気ディスク装置における新記録方式の1つであるビットパターンドメディア(BPM)上の磁気ヘッドスライダの浮上特性解析と設計指針の抽出を行うことである。 本年度は、まず、分子間の引力と斥力の双方を含むレナード・ジョーンズ(LJ)ポテンシャルから出発し、1次元の面内方向材料分布を有する物体の非接触状態における垂直・せん断応力を導出した。従来の研究では、ファンデルワールス引力のみを考慮した理論が展開されていたが、LJポテンシャルを用いることにより、固体表面が近接した場合の表面間力の垂直応力(圧力)とせん断応力を精密に計算することが可能となった。特に、面内方向に材料分布を有する場合のせん断応力を計算できるようになったのは、従来の垂直応力(圧力)のみの計算とは大きく異なる点である。この理論を用いて、非接触状態における物体内部の応力分布をベクトル図で示した。また、垂直応力(圧力)とせん断応力のそれぞれの引力成分と斥力成分が釣り合う条件を明らかにした。次に、相互作用する物体の形状を平行平面に特定し、これらの応力を積分することによって、物体間に働く相互作用力を計算した。その結果、材料界面上部での相互作用力の変化は材質の変化よりも緩やかであること、物体の長さを材料分布の周期の整数倍にすると垂直力は変化しないこと等を明らかにした。これらの成果は、磁気ディスク装置を含む微小機械の設計、ひいては固体接触理論等の基礎科学に重要な役割を果たすものである。さらに、これらの結果を実験的に検証する手法の検討に着手した。具体的には、フォースカーブの面内方向分布を超精密測定することにより、理論の検証を行うことを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論については、1次元面内方向に周期的に材料分布を有する場合と2 種類の材料が1ヶ所で接続している場合について、レナード・ジョーンズ(LJ)ポテンシャルを用いて相互作用応力(垂直応力(圧力)およびせん断応力)の導出に成功した。また、この理論を用いて応力の基本特性を明らかにした。実験については、フォースカーブの超精密測定によって、理論の検証を行うための予備実験に着手した。磁気ヘッドスライダの浮上解析については、基礎理論で求めた応力を積分し、スライダに働く力を導出すると共に、その基本特性を明らかにした。 上記の内容は、当初の研究計画にほぼ合致しているため、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
理論については、今年度に構築した1次元の基礎的な理論を基に、表面間応力の特性をさらに深く追求する。特に、周期的分布と非周期的分布の比較から、圧力変化の緩和距離や材料分布の臨界ピッチ等の諸特性について明らかにする。また、2次元材料分布への拡張を行う。1次元よりもかなり膨大な数値計算が必要と予想される。 実験については、理論の検証のための実験手法およびノウハウをより確実に取得する。その後、実験データを本格的に取得する(まずは、2種類の材料でできた固体表面間の表面間力を測定する)。 磁気ヘッドスライダの浮上解析については、浮上特性に関する基本特性を把握した後、より精緻なプログラム開発を行う。導出した理論や得られた実験データを適宜取り込むことにより、BPMに対するHDI設計の指針を提案する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由は特になく、物品費,旅費,その他の経費の差額の細かな積み重ねで生じたものであると判断する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度から実験を本格的に開始すると共に、成果発表も活発に行う予定であるので、これらの経費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)