2016 Fiscal Year Research-status Report
走化性バクテリアによる生物対流と熱対流の干渉および輸送特性に関する数値解析
Project/Area Number |
15K05780
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
柳岡 英樹 岩手大学, 理工学部, 教授 (40281951)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末永 陽介 岩手大学, 理工学部, 助教 (60413720)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生物対流 / 熱対流 / バクテリア / 酸素 / 走化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,酸素に反応する走化性バクテリアが入った懸濁液に温度勾配を加えたときの生物対流と熱対流の干渉を調査し,その干渉がバクテリアと酸素の輸送特性に及ぼす影響を明らかにし,さらに輸送を制御する方法を提案することを目的とする. 平成28年度では,生物対流のレーリー数および熱対流のレーリー数を広範囲に変化させ,熱生物対流のパターンの構造と輸送特性を調査した.計算において,対象とする容器は浅く,懸濁液中には酸素に反応する走化性バクテリア(枯草菌など)が存在している.水面から酸素が一様に供給されるため,酸素が豊富な水面へ向かってバクテリアが移動する.空気を一様温度に保ち,下壁面を加熱することにより,生物対流と熱対流を発生させる.得られた知見は以下のとおりである. 1.底面から加熱された懸濁液では,生物対流と熱対流が共存し,熱生物対流が発生する.熱対流のレーリー数を増加させると,生物対流に対する熱対流の干渉の効果が強まり,領域内に形成されるプルーム数が増加し,熱生物対流パターンが変化する.さらに熱対流のレーリー数を増加させると,熱対流が支配的になり,プルームが消滅し,サーマルプルームが形成される. 2.生物対流が発生している状態において,熱対流のレーリー数を増加させると,熱生物対流の対流速度が増加するため,対流による物質の輸送が促進され,領域全体にわたってバクテリアと酸素の輸送特性が向上する. 3.バクテリア濃度の初期乱れを変化させると,プルーム数が異なる熱生物対流パターンが形成される.パラメータが同一条件であるとき,領域全体における物質の輸送は,プルーム数によって定量的に変化せず,バクテリアと酸素の輸送特性は熱生物対流パターンに依存しない.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究は,申請書の計画通りに進んでいる.申請者のこれまでの研究から,生物対流パターンはバクテリアの初期濃度によって変化することが明らかになっている.当初の予定通り,先ずは,1つのパターンに着目し,温度差を変化させたときのプルーム同士の干渉の変化を明らかにすることができた.次に,温度差を固定し,バクテリアの初期濃度に様々な乱れを加え,波長が異なる多様な生物対流パターンを発生させ,パターンの波長による輸送特性の変化を確認できた.したがって,現在までの進捗状況は順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では,バクテリア濃度や温度差を変化させ,生物対流と輸送特性の熱制御を試み,微生物の有効利用の可能性を明らかにする.解析手順は以下の通りである. 1.前年度の解析をさらに進め,熱の付加がバクテリアと酸素の輸送特性を向上させるメカニズムを詳細に明らかにし,熱制御の原理を提案する. 2.以上の結果を総合して,熱の付加によって生物対流と輸送特性を制御することにより,様々な環境における微生物の有効利用の可能性について,一つの指針を提供する.
|
Research Products
(1 results)