2015 Fiscal Year Research-status Report
高周波圧力場で高速に回転する浮遊液滴の内部応力場及び内外流れ場に関する研究
Project/Area Number |
15K05788
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
渡辺 正 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (50391355)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液滴 / 回転 / 変形 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、高速に回転する非軸対称形状液滴の数値シミュレーションを系統的、かつ定量的に行うための計算環境の整備を重点的に進めた。数値シミュレーションには、流体の運動方程式であるナビエ‐ストークス方程式に基づく手法としてレベルセット法を用いた。この手法では、液滴内部は、液単相、外部は空気単相として、それぞれ単相流れの厳密な数値シミュレーションを行うことにより、液滴内外の流れ場を同時に、かつ定量的に求めている。液滴表面の変形運動を模擬するために、液滴内外の流体の運動方程式とあわせて、液滴表面からの距離を表すレベルセット関数の移流方程式を解いており、数値解法が複雑となり計算時間がかかるが、液滴の形状振動挙動を精度良く、また、安定に計算可能であることが確認されている。プログラムはフォートラン言語を用いて作成しており、基本的な並列化も施している。シミュレーションプログラムを本研究に利用するために、まず、linux環境の計算機システムにおいて、フォートランコンパイラーと並列計算ライブラリーであるMPIの実装を行い、各種関数の依存関係等を整備した。次に、レベルセット法によるシミュレーションプログラムを移植したところ、データ転送に関してMPIの不具合が発生したが、プログラムの修正により回避し、20コアを利用した並列計算による高速なシミュレーション環境を構築した。シミュレーションでは、既存の実験により回転数と液滴形状の関係が測定されている条件を基本とし、シミュレーション領域の大きさ、回転数や物性値を変更した際の変形挙動の差、変形から分裂に至る過程等について試計算を行い、回転液滴の変形挙動の基本特性が良好に再現可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、シミュレーションプログラムの開発整備、並列化及び効率化、データ処理方法の整備等、高速に回転する非軸対称形状液滴の数値シミュレーションを系統的、かつ定量的に行うための計算環境の整備を重点的に進め、あわせて、回転液滴挙動の基本的特性についての検討を進めることとしていた。計算環境の整備としては、まず、10コアからなるCPUボードを2枚搭載したワークステーションを導入し、linux環境を構築した。OSはlinuxとして広く使われているUbuntuとした。本研究のシミュレーションに用いるプログラムの原型はフォートラン言語により記述され、並列化が施されているため、次に、コンパイラーと並列計算ライブラリーの組み合わせを検討した後、高速化が期待できるコンパイラーとライブラリーのセットをUbuntu環境にインストール、整備した。続いて、これまで開発を進めてきたシミュレーションプログラムを本計算環境に移植し、実行を試みたところ、並列計算中のデータ送信、受信に関する部分で不具合が発生することがわかった。不具合は、並列計算ライブラリーによるものと考えられたが、プログラム中の該当箇所を検討し、データ転送処理を変更することにより、回避可能となった。これにより、20コアすべてを利用した並列計算が可能となり、回転液滴に関する試計算を行い、シミュレーション領域の大きさが結果に及ぼす影響を調べた。併せて、結果の可視化等のデータ処理方法の検討を行い、モデル作成や条件変更から結果の評価まで、一連の作業が行える環境を整備した。また、回転液滴の変形挙動の基本特性として、回転数や物性値を変更した際の変形挙動や変形から分裂に至る過程の違い等について検討した。これらの進捗により、27年度は、当初の予定どおり順調に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続き回転液滴の変形挙動の基本特性の理解を深めるためのシミュレーションを継続する。回転数や物性値を変更した際の変形挙動の違いを明らかにすることをめざし、まず、シミュレーション領域や、計算格子サイズ、時間ステップ幅、レベルセット法固有の各種パラメータ等について最適な組み合わせを検討する。変形が大きくなる過程を精度良くとらえるためには、シミュレーション領域を大きくする必要があり、また、ケース数も増加すると考えられる。このため、1ケースが実効的な計算時間内で実行できるように、各種パラメータの調整と同時に、可能な限り効率的なシミュレーションを行うための並列化や計算処理の検討もあわせて進める。さらに、シミュレーション結果のデータ量が増加することから、必要な変数を抽出する作業や、実験との比較を効率よく行うための、可視化を含む効率的なポストデータ処理環境も整える。これら、シミュレーション手法及びポストデータ処理環境の開発整備は、28年度中に終了し、回転液滴のシミュレーション研究のための数値実験環境として確立し、あわせて回転液滴の挙動に関わる物理現象の検討を進める。
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Research Products
(1 results)