2015 Fiscal Year Research-status Report
フリップフロップノズルを利用した流動制御器の開発と対向噴流のよどみ点制御への応用
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15K05789
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
角田 博之 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10207433)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 対向噴流 / 流体制御 / フリップフロップノズル / プラズマアクチュエーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,フリップフロップノズル(以後,FFNと記す)にDBDプラズマアクチュエーター(以後,PAと記す)を組み込むことでPAの誘起流れをトリガにした流体制御デバイスの開発ならびに本デバイスを利用した円形対向噴流の動的制御を研究目的とする.初年度の研究実績は以下の通りである. 1. FFNを利用したPA増幅流体制御デバイスの開発と検証 PAを駆動するための高電圧・高周波電源を新規購入してPAの特性を調べる予備実験を行った.誘電体材質と厚さを決定するために,ポリイミドとテフロンについてそれぞれの厚さを2~3種類に変えてPAを製作し,誘起速度をLDVで測定した.この結果,誘起速度の大きさや絶縁破壊による誘電体劣化などを考慮して,厚さ0.075 mmのポリイミドが最適と判断した.このとき,最大1.5 m/s程度の誘起速度が得られた.合わせて,PAに印加するAC電圧実効値と周波数そして繰返し印可のデューティ比を変えて誘起速度を測定することでPAの特性を明らかにした.また,フリップフロップノズルの設計を進め,二次元噴流用小型風洞を製作した. 2. 流体制御デバイスを利用した対向噴流の能動制御 PA増幅流体制御デバイスによる対向噴流制御実験に先立ち,噴流制御の基礎的資料を得るために,音波を利用した対向噴流制御を試みた.ノズル出口において噴流せん断層に環状に音響攪乱を導入し,対向噴流の下流方向への発達をLDVと可視化で調べた.導入した音圧レベルが小さかったため,噴流と対向流の速度比Vr>1.0の場合には音響攪乱の顕著な影響が見られなかったが,Vr=1.0の場合において40%程度の噴流到達距離の増大が得られており,今後のPA増幅流体制御デバイスによる噴流制御にむけて貴重なデータを得ることができた.なお,得られた研究成果を国内学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的1では,1) 数値解析を利用したPA増幅流体制御デバイスの最適設計,2) PAの製作とPAによる誘起流れの特性調査の2つを初年度の研究目標とした.このうち,2)については研究実績の項で述べたとおり,PAを実際に製作してその特性を調べる予備実験を行っており,当初の目的をおおむね達成している.1)についてはプログラムの作成に時間がかかり,計算の遂行にまで至らなかった.しかし,プログラムはほぼ完成しているので,計算の遂行とデバイス設計への応用は第2年度の目標とする. 研究目的2の当初目標は噴流制御に関する情報収集であった.国内学会に参加しての情報収集に加え,音波を利用した対向噴流制御に関する実験を行っており,計画以上に進展したといえる.以上の理由から,「②おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的1については,PA増幅流体制御デバイスの設計・製作ならびにその検証実験を研究第2年度に行う.まず,初年度に完成させた数値解析コードを利用して,FFNによる噴流発振に必要なPA誘起流れの大きさや設置位置に関して数値計算で調べる.この結果ならびに初年度に得られたPA特性に関する予備実験結果に基づき,流体制御デバイスを設計・製作する.検証実験では,PA誘起流れの大きさと噴流発振周波数との関係を調べ,数値解析結果と比較検討する.特に,デバイス出口流れをLDVで測定し,流体制御デバイスとしての特性を明らかにする. 研究目的2については,初年度に行った音波による対向噴流の環状攪乱に関する実験を継続する.初年度は音波のみの導入であったため,対向噴流に与える攪乱が弱く,大きな速度比で攪乱の影響が見られなかった.そこで,第2年度は送風機による搬送流にスピーカーからの音波を重ねた攪乱をノズル出口で環状に導入する.搬送流の大きさや音波周波数を変化させて実験を行い,対向噴流制御に必要な攪乱の強度・周波数を対向噴流の速度比を変えて調べる.また,攪乱の導入によるノズル出口せん断層の渦構造変化をPIVを用いて調べる.現有の高速度カメラと連続発光YAGレーザではカメラ感度と解像度が不十分でPIV計測に十分な画像を撮らえることができないため,高感度・高解像度の高速度カメラを新規購入しPIV実験に用いる.
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Causes of Carryover |
当初計画案では,噴流のPIV計測に現有設備である高速度カメラとYAGレーザを使用し,レーザスキャニング装置を第2年度に購入して噴流の3次元PIV計測システムを構築することを予定していた.しかし,初年度に噴流のPIV計測を試みた結果,現有カメラは購入から10年以上が経過しており,最新カメラに比べ受光感度が極めて不十分で,解像度も512×512と低いため,噴流せん断層の渦構造変化を高解像度でとらえることができないことが判明した.PIVによる高解像度速度場計測は本研究目的を達成する上で極めて重要であることから,高感度・高解像度の高速度カメラの導入が喫緊の課題となった(科研申請時の計画ではカメラの購入を予定していたが,交付額決定後の研究計画見直しで購入を断念した経緯がある).
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品購入計画を見直し,第1年度のPA駆動用AC電源の購入台数を2台から1台に減らした減額分を次年度使用額に残し,第2年度に購入予定であったレーザスキャニング装置の購入を取りやめることで,これらの経費をカメラ購入に充当することにした.PA電源を1台にしたことによって流体制御デバイスの実現に支障が生じた場合には,別経費でPA電源を購入する.レーザスキャンについては,レーザ光源をトラバース装置で移動させる機械的スキャン方式を確立しており実績もある.本研究でもこの方式を採用することにする.光学ミラーによるスキャン方式に比べてスキャン速度が遅いことからスキャン範囲が限られるが,測定点を適切に選択することで対向噴流のよどみ点領域の動特性をPIVで調べることは可能であり,本研究の目標達成には支障が無いと考える.
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Research Products
(3 results)