2015 Fiscal Year Research-status Report
走化性によるバイアスを受ける細菌群の挙動の数理モデル構築と実験的検証
Project/Area Number |
15K05796
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
後藤 知伸 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00260654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 唱 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80452548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ランダムウォーク / 離散モデル / 走化性 / 細菌 / 定常分布 / 一次元 / バイアス / 対流拡散方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
湖沼,海洋などの水系において,微生物は食物連鎖の底辺にあるものとして,物質の循環,移動に重要な役割を果たしている.とくに細菌は,食物連鎖中の他の生物とは位置付けが異なり,有機物の分解に関与する最終分解者としての役割を担っているものと考えられてきた.しかし,最近では,動物性プランクトンが細菌を捕食するという知見が得られてきたことから,微生物ループと呼ばれる被食者としての細菌を含んだ食物連鎖のモデルが提案されている. このような食物連鎖の中での役割を果たす微生物の存在は一様ではなく,他の大きな生物やその死骸などの表面,他の微生物と共生したバイオフィルムの中,生存に適した酸素や二酸化炭素,他の微生物や生物の老廃物といった物質濃度が生存や増殖に適した溶液条件になっている場所に集中する.すなわち,化学走性や光走性,重力走性などの結果として,微生物の生存密度には偏りが生じているのが自然である.このような偏りは,表面の存在など物理的な境界条件の変化によっても影響を受け,これまでに,境界近傍での微生物の運動が調べられてきており,運動と境界との流体力学的な干渉が,微生物を境界近傍に留まらせる一因となることが判明してきている. 本研究では,走性や環境条件によって偏在する細菌の分布を明らかにする数理モデルを構築することを目指す.具体的には,空間の一点に細菌を引き寄せる誘引物質が存在し,そのまわりに集まる細菌を例にし,細菌の走性の特徴を取り入れたバイアス付きのランダムウォークの数理モデルを構築する.微生物の中でも寸法が小さく,運動機能が限られる細菌の運動は他の微生物の走性を最も単純化したものだと考えることができる. 申請者が提案したバイアス付きランダムウォークの1次元離散モデルに対して細菌分布の解析解を得た.また,これを基に,バイアスの強さを変えたモデルを作成し,これに対する解析解を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次元の場合に,バイアスの強さと細菌の定常分布の関係が明示的に得られた.ただし,観察結果との比較は未実施である.
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Strategy for Future Research Activity |
2次元の場合についての結果を数値シミュレーションを利用して得る. 個々の細菌の方向転換時の特性を調べる. 一次元流路において細菌の定常分布の計測を行う.
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Causes of Carryover |
少額であり,とくに理由はない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬などに使用する予定.
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