2017 Fiscal Year Annual Research Report
走化性によるバイアスを受ける細菌群の挙動の数理モデル構築と実験的検証
Project/Area Number |
15K05796
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
後藤 知伸 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00260654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 唱 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (80452548)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 走化性 / ランダムウォーク / 対流拡散方程式 / 細菌 / 定常分布 / 離散モデル / バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
物質を検知して好適環境に移動する走化性(化学走性)のため,自然環境における微生物の存在は一様でない.走化性を示す最も単純な生物である細菌は,ランダムに移動方向を変えて移動しながら異なる時刻における2地点の物質濃度を比較して好適環境に向かっているかを検知しており,方向を変えるまでに一定の応答遅延時間を必要とする.走化性によって偏在する細菌の存在確率の数理モデルを構築するとともに,誘引物質のまわりに集まる細菌の分布を計測し,走化性の強さと細菌分布の関係を明らかにすることを目指した. 具体的には,空間の一点に細菌を引き寄せる誘引物質が存在するものとし,そのまわりに集まる細菌を例として,細菌の走性の特徴を取り入れたバイアス付きのランダムウォークの数理モデルの構築をすることにした.微生物の中でも寸法が小さく,運動機能が限られる細菌の運動は他の微生物の走性を最も単純化したものだと考えることができる. バイアス付きランダムウォークの一次元離散モデルを提案し,このモデルで表される細菌分布の解析解を得た.また,これを基に,バイアスの強さ,すなわち,走化性の強さを変えたモデルも作成し,これに対する解析解を得た.これにより,一次元の場合には,バイアスの強さと細菌の定常分布の関係を明示的に示すことができた. さらに,この一次元モデルの直接的な拡張として,二次元モデルを提案した.このモデルを用いて一点に誘引物質が存在する場合のシミュレーションを行い,細菌分布が一次元モデルの場合と同様に指数分布となることを確認した.ただし,分布の勾配は一次元の場合よりも急峻になる.二次元モデルの解析解を得るには至っていない.研究を進めるうちに,細菌の方向転換時の指向性や,個々の細菌の速度の違いが細菌分布に影響することが明らかになった.そのため,サルモネラ菌を用いて,これらの特性の計測を開始している.
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Research Products
(3 results)