2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05819
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 由大 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60376514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上道 茜 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10734155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エンジン / 燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,天然ガスの更なる有効利用を目指し,小型多気筒エンジンの各シリンダで異なる燃焼モードを条件に応じて組み合わせて使用する制御アルゴリズムに関する研究を行う。具体的には,高効率であるが運転可能な条件が狭いとされているHCCI(予混合圧縮自己着火)燃焼と,熱効率は必ずしも高くはないが安定した燃焼を実現できるSI (火炎伝播)燃焼,さらにHCCI燃焼の化学反応制御,また通常SI燃焼の燃焼促進に,その排気ガスを再利用するリッチSI燃焼(燃料改質)の3つの燃焼を適当な組み合わせで実現し,従来のSI燃焼のみの場合よりもエンジンシステムとして,高い熱効率の実現を試みるものである。 上記の目的を実現するためには,大きく分けて,リッチ燃焼(燃料改質)での生成物特性と制御手法の構築,リッチSI燃焼排ガス導入(DEGR)時のSI燃焼およびHCCIエンジンの燃焼特性調査,3種類の燃焼モードを組み合わせた最適制御アルゴリズムの構築といった項目の検討が必要となる。 これまでに,素反応数値計算によりリッチSI燃焼で生じる排ガスの組成を予測し,予測組成をもとに各成分を混合して作成した模擬改質燃料と天然ガスの主成分であるメタンを混合し,HCCI燃焼を想定した気筒に供給し,DEGR割合およびSI燃焼の当量比変化を想定した実験を行い,燃焼特性を実験的に明らかにした。また,実験でもリッチSI燃焼を実現し,点火時期,当量比が排ガス組成に及ぼす影響を明らかにするとともに,リッチ条件でも安定して効率よく運転できる運転条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験用エンジンのセンサーの不具合などが生じ,当初予定していた実験が遅れ,制御アルゴリズムの検証に向けたエンジンの改造,整備までは行えなかった。しかしながら,昨年度のHCCIでの運転に加え,SIでの運転も問題なく行え,全体としては大きな遅れとはなっていない。 これまでの成果として,H27年度には,素反応数値計算による熱化学平衡計算を行い,SI燃焼の当量比が排ガス組成に及ぼす影響の把握,HCCI燃焼実験のガス供給条件を決定し,リッチSI燃焼を模擬したガス(DEGR)と新気を任意の割合で混合し燃焼実験を行った。天然ガスの主成分であるメタンを新規の燃料として用いたが,メタンのみでは,その着火性の悪さからHCCI燃焼を生じさせることができなかったが,DEGRの導入によりHCCI燃焼が可能となった。また,DEGR率およびSI燃焼の当量比に対するHCCI燃焼の着火時期の感度を明らかにした。これらの知見は,2016年6月の日本機械学会の第21回動力・エネルギー技術シンポジウムにて発表し,さらにその内容を精査したものを日本機械学会論文集にも投稿し掲載となった。 H28年度には,H27年度には素反応数値計算によって推測していたリッチ燃焼時の排ガスの組成について実験的に明らかにするために,エンジンがSI燃焼を行えるように改造し,点火時期,当量比をパラメータとして実験を行った。当量比の増加に伴ってメタンの改質成分である水素,一酸化炭素のモル分率が計算同様に大きく増加することが確認できた。また,過濃条件において点火時期を一定以上進角させると失火サイクルの割合が急増しエンジンが不安定になるが,ガス組成については点火時期の影響が少なく,熱効率を主な評価指標として点火時期を設定できることを明らかにした。この成果は,2017年6月の日本機械学会の第22回動力・エネルギー技術シンポジウムにて発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度にDEGRを導入したHCCIの燃焼特性を明らかにした。H28年度にはリッチSI燃焼で,当量比,点火時期と排ガス組成の関係を明らかにするとともに,SIリッチ燃焼の点火時期は排ガス組成には大きく影響しないことから,リッチSIを行う気筒の燃焼安定性,熱効率を最適化指標として良いことが明らかになった。従って,今年度は通常のSI燃焼にリッチSI燃焼の排ガスが及ぼす影響を明らかにするとともに,熱効率を評価関数とし,3つの燃焼の組み合わせを最適化する制御アルゴリズムの構築を目指す。具体的には,SI燃焼への影響については,昨年度に取得したリッチSI燃焼の排ガスデータをもとに,模擬ガスを作成し,通常のSI燃焼に供給し,その燃焼特性を明らかにする。また,2気筒を利用して,1気筒でリッチ燃焼を行い,その排ガスを通常のSI燃焼を行う気筒に供給する方法も検討する。なお,エンジンは3気筒のものを用いているが,現状は火花点火の制御装置が1気筒のみに対応していることから,点火制御系のチャンネル数を増やすよう制御回路の増設が必要となる。次に,DEGRを導入したHCCI燃焼実験,リッチSI燃焼実験,DEGRを導入したSI燃焼実験のデータを整理し,制御アルゴリズムを検討する。このデータ整理,制御アルゴリズム構築に当たっては,統計的な処理によって実験式を構築することを予定している。これらの過程によって構築した制御アルゴリズムで実機を運転し,制御アルゴリズムの有効性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
H28年度に,エンジンの回転角度センサーの故障などが生じ,制御試験が行えるようなエンジンの改造(DEGR供給用配管など),制御回路の整備の完了には至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に使用するエンジンは3気筒であるが,これまで1気筒のみで燃焼試験を行ってきており,制御アルゴリズムを検証する上で,DEGRを導入し2気筒以上同時に運転できるようにエンジンの改造,整備を行う(80万円)。他には実験用燃料(15万円),学会参加費等に使用する予定である。
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