2015 Fiscal Year Research-status Report
高温水蒸気を用いた伝熱促進機構のシステム構築と高効率化
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15K05820
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
酒井 清吾 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70323110)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 伝熱機器 / 燃焼 / 輻射 / 対流 / エネルギー効率化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミ溶融炉による実験により,炉内に水蒸気を導入すると,熱伝達とふく射伝熱の両方のメカニズムを介してエネルギー効率を向上できることが,これまでの研究により明らかとなってきた.一方で,炉内に導入すべき水蒸気量は多過ぎても少な過ぎてもエネルギー効率の改善をもたらさず,燃料の燃焼により生じる水蒸気および吸入する燃焼用空気の湿度を含めて,全体の水蒸気量をコントロールする必要がある.本研究では,アルミ溶融炉の水蒸気加熱装置をより高度化し,水蒸気総量を制御して,エネルギー効率が高くなる条件を探り,導入する空気の条件が変化しても効率を維持できるようなシステム構築を行うことを目的とする. 平成27年度は,まずモニタリングシステムの構築を行った.これまでの実験では,実験前後に気温,湿度を確認し,使用した燃料ガスの量を計測していたが,炉の燃焼条件は時々刻々変化するため,燃焼用空気の状態,すなわち温度・湿度を逐次モニタリングするとともに,燃料の供給量,排気の状態を計測するシステム構築を行った.燃焼用空気の取り入れに関しては,エアインテークボックスを設置する予定であったが,ボックスの設置自体に大きな差はなく,また燃焼バーナーは等量比が一定に保たれる設定とした.そのため,バーナーの空気取り入れ口付近で燃焼用空気の温度・湿度を,熱電対および湿度計を用いて逐次モニタリングした.燃料の消費量については,大気温度の変化による供給量変化を観察するため,アズビル社製のガス流量計を用いて瞬時流量を計測した. 次に,年度計画ではふく射・対流複合伝熱コードの改良を予定していたものの,十分なモニタリングシステムの構築ができたため,従来の水供給システムを用いて,水供給量の最適化実験を行った.実験においては燃焼状態の確認を行った上で,燃焼用空気の平均大気圧,絶対湿度,初期温度,水供給の影響を評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モニタリングシステムの構築では,エアインテークボックスの必要性がないこと,燃焼用空気の温度・湿度を逐次モニタリングするシステムを構築するとともに,燃料の消費量を瞬時値として計測するシステムが構築できた.また,これまでオーバースペックだった水供給について,新たに少量の継続ができる流量計を導入するとともに,供給水のバッファー領域を確保することで,供給する水の温度管理も行うシステムに変更できた. これらのモニタリングシステムの構築での成果をもとに水供給量の最適化実験を行うことができた.四季を通して数多くの実験を繰り返したところ,燃焼用空気の平均大気圧の変化は,炉の効率に影響を与えないことが明らかとなった.また,絶対湿度に関しては,最適となる値が存在する可能性を示すことができた.燃焼用空気の初期温度はほとんど影響がなく,アルミが溶けるまでの温度上昇に対してその幅が小さいため,実験データを整理する上で,特に配慮する必要がないことも確認できた. 以上の結果から,年度当初の計画よりも実験の面からは順調以上に推移している一方,数値解析の面では十分な成果が得られていないため,総合しておおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を進めていく上で,既存の大型のアルミ溶融炉では,熱損失や溶融物の物性変化が著しく,限界があることが平成27年度の成果として明らかとなった.そのため,当初の平成28年度の研究計画を変更し,小型の実験装置を構築し直す.加熱対象はアルミから純水に変更し,水供給システムについては,従来の多孔質体への滴下から,超音波加湿システムを導入する.アルミ溶融炉では余熱により水を水蒸気に変化させていたため,追加のエネルギーは必要なかったが,超音波加熱システムでは追加のエネルギーが必要であるため,その分も含めて効率向上がなされるシステムを構築する.この研究内容は,平成29年度に行う予定の電気加熱実験装置の構築に先立つ設計指針等が得られると考えられる. 平成27年度に行う予定であったふく射・対流複合伝熱コードの改良については,研究室保有の独自コードでは汎用性が低いため,市販汎用コードでの数値解析を行い,その有用性を確認する.
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Causes of Carryover |
残額が非常に少なく,物品購入ができる額ではない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越す額は非常に少ないため,次年度の使用計画に合わせて使用する.
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Research Products
(3 results)