2015 Fiscal Year Research-status Report
高温固体に入射する水溶性高分子ポリマー水溶液液滴の固液界面現象と被膜形成の素過程
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15K05825
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 仁 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (40229050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宅田 裕彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20135528)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 対流 / 焼き入れ噴霧冷却 / 液滴 / 高分子ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
鋼材の焼き入れ冷却では、冷媒として水や油が適用されるが、水溶性高分子ポリマーを水で希釈した水溶液(水溶性焼き入れ剤)も使用される。この冷媒は、水と油の中間の冷却速度が実現でき、ポリマーの種類や希釈濃度を変更することで冷却速度の調整が可能である。また、冷却途中に鋼材表面にポリマー被膜を形成し、その効果で焼き割れと呼ばれる材料の局所破壊を抑制するとされている。しかし、ポリマー被膜の形成メカニズムや条件は不明であり、焼き割れ防止機構も明らかではない。これらの知見が得られれば、より高精度な焼き入れ冷却制御が実現でき、製品の品質向上が期待できる。焼き入れ冷却では、浸漬冷却法やスプレー冷却法が使用される。本研究ではスプレー冷却法を研究対象とし、その素過程である単一液滴と加熱固体面との衝突現象とポリマー被膜の形成過程を可視化実験によって研究した。分子量が約20,000の高分子ポリマー(ポリオキシエチレン・ポリプレングリコール)を水で希釈した常温の水溶液を供試液体とし、透明なサファイアおよび石英プリズムを加熱固体とした。固体面温度は200℃~600℃である。鋼に近い熱伝導率を有するサファイアに液滴を衝突させた場合、固体面温度が600℃ではポリマー被膜は形成されなかった。500℃ではポリマー被膜が一時的に形成され、その後、熱分解により消失した。一時的な被膜の存在時間は固体面温度の低下により長くなり、供試ポリマーの熱分解開始温度である300℃以下になると、被膜の消失は起こらなくなった。熱伝導率が小さい石英ガラスでは、固体面温度が600℃でも、一時的な被膜形成が確認された。これは、液滴衝突途中の過渡的な固液界面温度が被膜形成の重要な支配因子であることを示唆していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は可視化実験手法の確立とポリマー被膜形成機構の解明を主たる目的としており、これらについては達成できたと考えている。また、液滴衝突時の固体面の過渡的な温度測定から熱伝達量の調査を計画していたが、温度計測上の問題点が幾つか発生した。これらの問題はほぼ解決でき、本格的なデータ収集の目途はついている。以上のことから、研究の進捗はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験手法はおおむね確立できているため、今後は被膜形成について諸因子の影響の調査を進める。所期の研究計画のとおり、固体面温度および液滴衝突速度が被膜形成に及ぼす効果を重点的に研究する。また、液滴と固体面との熱伝達の計測についても実験を進める。
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