2017 Fiscal Year Research-status Report
排気ガス組成制御による大量EGRガソリンエンジンの研究
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15K05839
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
中野 道王 日本工業大学, 工学部, 教授 (90394692)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 火花点火式内燃機関 / 燃料 / 排ガス / 燃焼生成物 / 二次元ガスクロマトグラフィー / 飛行時間型質量分析計 / 低温酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガソリンに含まれる主要な炭化水素が排ガス成分に及ぼす影響を明らかにするために,4ストローク空冷単気筒火花点火機関を用いて,その排ガス成分をGC×GC-TOFMSにより詳細に分析した.燃料としては,直鎖状飽和炭化水素としてn-heptaneを,分枝状飽和炭化水素としてisooctaneを,環状飽和炭化水素としてcyclohexaneを,側鎖としてメチル基を有する環状飽和炭化水素としてmethylcyclohexaneを,芳香族炭化水素としてtolueneを用いた. リサーチオクタン価(RON)が0であり反応性が高いn-heptaneを燃料とした場合,排ガス中にはheptanoneやheptanedioneなど燃料分子の骨格を有する含酸素化合物が存在した.これらは,低温酸化反応メカニズムを経て安定化し化合物と考えられる.一方,RONが100であり反応性が低いisooctaneを燃料とした場合には,燃料分子の骨格を有する含酸素化合物を検出することができず,高温反応場を経て生成されたと考えられる低級な含酸素化合物の検出強度が大きかった.また,RONが83.0のcyclohexaneを燃料とした場合は,5-hexanal や7-oxabicyclo[2.2.1]heptaneなど低温酸化反応メカニズムの途中で安定化した化合物や芳香族化合物であるphenolが検出された.これらのことから,RONが低い燃料を用いれば排ガス中に低温酸化反応メカニズムの途中で安定化した化合物を多く残せる可能性が示唆された.また,cyclohexaneにメチル基が付加したmethylcyclohexaneを燃料とした場合にも低温酸化反応メカニズムを経た化合物が存在したが,tolueneを燃料とした場合に検出強度が大きかった排ガス成分は全て芳香族化合物であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H29年3月末の実験装置移動の際に動力計内部の腐食が判明し,これの修理に約2.5ヶ月を要した.また,その後のtolueneを燃料としたエンジン実験において,エンジン内に大量のカーボンが付着し,シリンダ,ピストンなどの主要部品を交換する必要が生じたために,修理に約2ヶ月を要した.また,H29年11月~H30年2月の間に,GC×GC-TOFMSの注入口,カラム,モジュレーターに関する破損や劣化による部品交換が複数回発生した. これらのために,実験回数に大幅な制限が生じた.そこで,本年度は燃料の分子構造の違いに着目した実験を優先し,n-heptane,isooctane,cyclohexane,methylcyclohexane,tolueneの5種類の炭化水素を燃料とした実験を行った.当初予定していた当量比の影響(0.9,1.0,1.1)についてはH30年度の実施予定とする.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度までに,n-heptane,isooctane,cyclohexane,methylcyclohexane,tolueneの5種類の炭化水素を燃料として当量比1.0での実験を行い,分子構造と排ガス成分の関係を詳細に検討できた.しかし,実験装置の故障などで当量比の影響を明らかにすることはできなかった. そこで,H30年度は,上記の5種類の燃料に対して,希薄燃焼(当量比0.9)および過濃燃焼(当量比1.1)における実験を行う.また,エンジンの負荷(トルク)を変化させた実験も行う.負荷については,高負荷では高温酸化反応の影響が大きく燃料の分子構造による差異が少ないと考えられることから,低負荷側での実験を行う.具体的には,H29年度までの負荷に対して,1/2および1/4を実験対象とする.これらの結果から,昨年度までの結果と合わせて分子構造,当量比,負荷が排ガス成分に及ぼす影響を明らかにする予定である. 排ガス成分で重要と判断された化合物については,試薬として入手した上でガソリンに混合し,これを燃料とする実験を行うことでSI燃焼への影響を明らかにする予定である.特に燃焼期間に着目し,燃焼促進または燃焼抑制の効果を評価する.また,二台の単気筒エンジンを用いて,1台目のエンジンの排ガスを模擬EGRとして2台目のエンジンに供給するための実験装置の構築を行い,前述の各種炭化水素を用いた実験結果の実用可能性を明らかにする予定である.
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Causes of Carryover |
(理由) 研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため. (使用計画) 研究計画に大きな変更はなく,前年度の未達分を含めて当初予定した研究を進める.
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