2015 Fiscal Year Research-status Report
臨界点近傍ヘリウムのマルチスケール熱流動のダイナミクスとそのユニバーサリティ
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15K05852
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岡村 崇弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90415042)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自然対流 / 乱流 / GPU |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,臨界点近傍ヘリウムにおいて出現するメソスケールからマクロスケールに至る多様なスケールを有する熱流動ダイナミクスの素過程を明らかにすると共に多様なスケールがもたらす熱流動場のユニバーサリティを解明することである. 具体的に明らかにするポイントは,(1)連続体近似が破綻する熱力学的状態と流れ場中に存在する最小長さスケールの関係を定量的に示したダイアグラムの構築,(2)メソスケールからマクロスケールの構造が共存する熱流体系のマルチスケール融合解析手法の構築,(3) 共存系での速度・温度分布ならびに熱伝達特性の解明と流れ場の普遍的な性質の抽出,(4)クラスタ領域と連続体領域の界面構造(バッファ層)の解明である. 初年度は主に計算コード及び計算環境構築に焦点を絞る.年度前半では計算環境について検討し,実際にNVIDIA Tesla K80を導入した計算環境を整えた.年度後半からは鉛直円柱系の臨界点近傍Heliumの自然対流系についてPr=0.7~1.0程度の流れ場を仮定した直接数値計算を実施した.この領域は連続体近似が成立する領域であり本来着目するべき領域とは異なるが,Pr~0.7の流体について他研究者によって取得された高精度な実験データと比較することで,計算スキームの確認,計算環境の性能評価に加え,円柱座標系における乱流への遷移過程について知見を得ることを目的に実施した.GPUに対応するためのコードはCUDA-Fortranを用いて自作している.比較の結果平均場,変動量の統計的な性質は大凡一致しているが細かい点で相違している部分もあり,理由については現在調査中である.また円柱系の乱流遷移は発熱体周りに 渦輪が列をなして生成しそれが崩壊し乱流へ移行する様子を確認した.この妥当性についても現在調査中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたDNSコードの妥当性の検証に時間がかかっていることが理由の1つである.初年度に実施したDNS結果を解析すると,平均場ならびに変動量のノーマル方向分布はPr=0.7において得られている実験結果と定性的に良い一致を示している.定量的にも大きな相違はないものの,いくつかの相違が見られた.この相違について計算スキームの見直しを行っている.特に空間離散化法の改良ならびに楕円形方程式の反復解法の高速化にとりかかっている.また円筒座標系における乱流遷移について,初期の段階で渦輪列が形成されることがDNS結果を解析し得られたが,この渦列形成と擾乱波数の関係性についてOrr-Sommerfeld方程式の固有値解析から得られる結果とコンシステントであるかについてコードを作成し検証している.以上の付加的課題に取り組んでいることが遅延理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
Pr>>1で見られるマルチスケールの流れ場を明らかにするためのモデリングを行う.具体的には周期境界を想定したもっともシンプルな系においてクラスタ構造の凝集の様子を分子動力学的手法を用いて明らかにし、その結果に対して適切にモデリングを施し、流れ場中で最小スケールを模擬した流体塊をラグランジュ追跡する融合的手法によりシミュレーションできるコード制作を行う。 加えて流れ場中に固定されたオイラー的な温度変動に着目しその統計的性質を実測し計算結果のそれと比較する。この際臨界点近傍では揺らぎにより初期場そのものの揺らぎが無視できない。これを回避するために同一条件の実験を多数繰り返し、統計的に実験結果の妥当性を検証する。 また初年度から2年次までに得られた結果をまとめて、国内学会もしくはワークショップで成果の報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度の研究がやや遅れており,初年度受領額のうち110013円については次年度に先延ばしする必要が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額110013円については2年次の上半期に使用する予定である.
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