2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05857
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
鎌倉 友男 電気通信大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50109279)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超指向性スピーカ / 自己復調現象 / 超音波 / 非線形性 / 歪み低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波の細いビーム幅という特徴と,超音波の非線形性に基づく自己復調現象を活かした超指向性音響システムの実用化において,復調するオーディオ信号の歪み低減に関して未だ十分な研究成果が得られていない。そこで,超音波変調方式を再検討し,歪み低減に特化した変調方式を提案し,高特性な超指向性音響システムを実現するとともに,その応用を推進することが本研究課題の目的である。ここでは,歪み予測器と負帰還回路の組み合わせで歪み低減に対処することを提案している。 ところで,自己復調現象の理論モデルに,従来からBerktayの式が利用されているが,このモデル式は非線形性が比較的弱いときに適用できる。本音響システムを実際に利用する際は非線形性が比較的強い場合であり,このときはBerktayの式の適用限界を超えるため,Merklingerのモデル式の利用がより現実的である。このことを,復調されるオーディオ信号の歪み(高調波歪みと混変調波歪み)の観点から,40kHzのキャリア超音波を用いて実証した。すなわち,Merklingerの式を利用すれば,自己復調現象で生成されるオーディオ信号の波形が理論予測できることを,実験を通して示した。この結果は,本研究課題の目的のひとつである復調音の歪み低減化の実現において大きく前進したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超音波の自己復調過程で高調波歪みや混変調波歪みが発生するが,この理論予測,そしてその理論予測を帰還回路に組み入れたサブ回路の構成を,本研究で具体的に示すことである。そこでまずは,理論予測については,従来から超音波の自己復調現象の数式化において利用されているBerktayのモデル式よりも,より高音圧まで適用できるMerklingerの式が適していることを実証した。すなわち,超指向性スピーカは指向性の鋭いオーディオ信号を生成する際に,不要で明瞭度の低下を引き起こす非線形歪みを発生する。このスピーカの更なる実用化において,この非線形歪みを低減することが重要である。そこで,復調されるオーディオ信号の波形を予測するに適した簡易式を再考し,予測した波形と実際に復調されるオーディオ信号を実験を通して比較した。この比較の際に,代表的な被変調波としてAMとSSB信号を用い,超音波エミッタから放射されるキャリア超音波の包絡線関数から,復調オーディオ信号の波形を予測する検討を行った。この結果,予測した波形と実際の波形が類似することから,Merklingerの式の利用が適することが分かった。この結果を具体的に回路に組み入れるところで研究の進展が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
いままでの研究から,Merklingerの式が復調生成されるオーディオ信号の理論予測に適用できることが分かった。次のステップとして,このモデル式を電子回路として実現し,そして従来の変調回路に縦続に帰還回路として組み入れることである。この帰還回路が実現できれば入力オーディオ信号と類似の,つまり波形歪みのないオーディオ信号が再生されることになる。Merklingerの式は逆正接関数と2階微分で表されるが,特に前者の関数をどのように回路として組み入れるかが今後の大きな課題である。この課題が本年度の研究テーマのひとつである。もう一つの研究テーマは超指向性スピーカを有する音響システムの応用である。現在,キャリア周波数を従来の40kHzより低くして,超音波から可聴音への変換効率を高める作業を行っており,これが実現できれば低い変換効率の欠点を克服した新たな応用の道が開けると思われる。
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Causes of Carryover |
Merklingerのモデル式を変調回路に組み入れた帰還回路を試作するための費用,またその動作確認のための実験用超音波素子の購入ができておらず,これらの費用が主な残高である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在,アナログ及びデジタル回路両面からMerklingerのモデル式を変調回路に組み入れることに取り組んでおり,当初の経費を利用する予定である。一方,超指向性音響システムの新たな応用として,長距離音響アラートシステムを構築中であり,このシステムの超音波エミッタ試作のための超音波素子の購入も進めている。
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Research Products
(9 results)