2015 Fiscal Year Research-status Report
自動車用オートマチックトランスミッションにおける飛躍的振動低減技術の確立
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15K05866
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
劉 孝宏 大分大学, 工学部, 教授 (60230877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 健一郎 鹿児島大学, 工学部, 教授 (80264068)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 回転体の振動 / 強制振動 / 非線形振動 / オートマチックトランスミッション |
Outline of Annual Research Achievements |
震災を契機としたエネルギー問題の高まりから,近年の自動車の燃費向上が急務となり,自動 車業界では,ディーゼル化,省気筒数化,高負荷低回転域からのロックアップなどが競争的に推進されている。その一方で,エンジンの高出力化に対するニーズも高い。このような開発動向により,エンジンの爆発による下限振動数が低下したり,トルク変動が増大化している。そのため,オートマチックトランスミッション(AT)の振動を低減する最適設計が複雑化するとともに,分数調波振動等の新たな非線形振動が多発している。本研究では,それらの問題を解決するため,遺伝的アルゴリズムを用いたATの飛躍的振動低減を図る最適設計法を確立すること,および多発している非線形振動の発生メカニズムを解明しその防止対策を確立することを目的としている。 平成27年度は,主に実機ATで発生する分数調波振動のメカニズム解明と基礎実験装置の設計・製作・実験を行った。また,ATの振動低減に対する最適化を図るため,遺伝的アルゴリズムのプログラムの基礎構築を行った。具体的な成果は以下のとおりである。 1. 非線形振動に対する多段型断片線形特性の最適設計に関しては,実機のシステムパラメータの同定および多段型断片線形特性の最適化に関するプログラミングや数値計算を完了した。 2. 分数調波振動の発生原因解明および防止対策検討のための基礎実験装置の設計・製作に関しては,基礎実験装置の設計・製作を完了するとともに,基礎的実験を開始し,その成果を,APVC2015(ベトナム)およびD&D2015(弘前市)で発表した。 3. 遺伝的アルゴリズムの構築に関しては,プログラムの基礎構築を完了した。 4. 平成28年度以降に実施予定であった,新たな自動車用ATの振動低減手法に関して,先行して特許出願を行った(特願2015-226653)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,遺伝的アルゴリズムを用いた自動車用オートマチックトランスミッションの有害な振動を飛躍的に低減させるための最適な設計手法および非線形振動の発生メカニズムと防止対策を確立することを目的としている。平成27年度は,1. 非線形振動に対する多段型断片線形特性の最適設計,2. 分数調波振動の発生原因解明および防止対策検討のための基礎実験装置の設計・製作,および3. 遺伝的アルゴリズムの構築を目標として研究を実施した。1に関しては,数値計算用パラメータの決定を完了し,断片線形系で発生する分数調波振動について,数値計算プログラムの作成を完了し,切り替え点間の角度範囲や剛性比の影響ついて,防止対策としての提案を行うことができた。2に関しては,実験装置の設計・製作を完了し,基礎実験を開始した。その結果,分数調波振動を再現することができた。その研究結果を,APVC2015およびD&D2015で発表した。3に関しては,遺伝的アルゴリズムの基礎プログラムを作成し,動作確認をすることができた。当初の計画では, 平成28年度以降に実施予定であった,新たな自動車用ATの振動低減手法に関して,自動車用AT会社および鹿児島大学と共同で先行して特許出願を行った(特願2015-226653)。 以上の結果から,平成27年度の目標はほとんど達成できているため,評価は,「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,多段型断片線形特性を有する系における分数調波振動の最適設計の提案と基礎実験装置の設計・製作および基礎実験を完了した。また,最適設計の手法として,遺伝的アルゴリズムによる基礎プログラムを作成し,動作確認をすることができた。平成28年度は,平成27年度の研究成果を,より実用化に適した設計法として確立するため,基礎実験による徹底した現象の解明を実施するとともに,最適化プログラムの構築を図る。具体的には,以下の1~4の項目を実施する。 1. 自動車用ATで発生する分数調波振動等の非線形振動の発生メカニズムと防止対策を検討するため,基礎実験装置を用いて各種パラメータの影響を理論および実験の両面から検証し,防止対策を検討する。2. 基礎実験における動吸振器等の効果を検証するため,多自由度化した基礎実験装置の設計・製作を行い,実験を開始する。3. 実機のシステムの最適化を図るための遺伝的アルゴリズムの組み込みを実施し,プログラムを稼働させる。4. 振り子型動吸振器の非線形振動に対する発生メカニズム解明のための解析プログラムの構築を行う。 実施計画としては,平成27年度購入予定であったモード解析ソフトを別予算で購入できたため,学会での成果発表や実験装置の改良が予定されている平成28年度への繰り越しを行っており,従来の予定通り進めることが可能である。
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Causes of Carryover |
実験モード解析ソフト(ModalView)と同等のソフトを別予算で入手することができたため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の仕様計画としては,1. イギリスで開催されるMOVIC2016,宇部市で開催されるD&D2016および札幌市で開催される自動車技術会秋季大会での研究発表の出張旅費,2. 基礎実験装置改良のための物品費等に使用予定である。
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Research Products
(3 results)