2016 Fiscal Year Research-status Report
微分ゲーム理論を応用した非線形制御系の解析的検証手法の開発とその応用
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15K05876
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
堀内 伸一郎 日本大学, 理工学部, 教授 (30181522)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 / 制御系検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,非線形性を含む制御対象に対する制御系の性能保証を目的とした新しい解析的手法を開発し,実際的なシステムへの応用から開発手法の実用性・信頼性を検討することである.新たな制御系解析方法の基本的アイディアは,制御器および外乱・パラメタ変動を,それぞれシステムを最適に制御しようとするプレイヤおよびシステムを最悪状態に陥れようとするプレイヤのように,利益の相反する2人のプレイヤと見てゲームの理論を応用し,最悪状態において制御器がどの程度制御系の性能を維持できるかを評価するというものである. 平成28年度は昨年度に引き続き,制御器の最適化と外乱・パラメタの最悪化問題を微分ゲームとして定式化し,簡単な例題で検討した.制御器によって生成される制御入力をu(t),時間に依存しない変動パラメタをb,時間的に変動する外乱をd(t)とし,終端時間で計算される評価関数J(u, b, d)を設定する.昨年度は時間に依存しない変動パラメタを考慮していなかったが,今年度は新たに考慮した.この時,u(t)はJを最小に,bとd(t)はJを最大にするように決定されるものとすれば,u(t)とb,d(t)の間でお互いの利益が相反する微分ゲーム問題を構成できる.この問題は一種の最適制御問題であるが,時間関数であるu(t)とd(t)および時間に依存しないパラメタbの最適化が必要となるので,通常の変分法に基づいた最適化は難しい.そこで数値解法として,時間関数を離散化し,各離散時間における値を静的なパラメタとして扱う「直接法」と呼ばれる方法を用いてこの問題を解いた. 簡単な例題でこの方法の計算時間,計算精度,結果の信頼性などについて検討したところ,低次元の簡単なシステムについては,検討した手法によって妥当な解が得られた.しかし,より高次の制御対象については計算時間,計算精度などの面で問題があることもわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では平成28年度は前年度に開発した検証手法を実際的な車両運動制御系に適用し,その実用性・信頼性を検討する予定であった.しかし,「研究実績の概要」で述べたように,平成28年度は平成27年度に引き続き,制御系の解析的検証問題を微分ゲームとしての定式化する方法とその数値解法について種々検討した結果,低次のシステムに対しては開発手法が有効であることが示されたが,より実際的な高次非線形システムに対しては計算精度,計算時間などの面で問題があることがわかった.また,評価関数の選び方によって最悪外乱・最悪パラメタが変化し,制御系全体としての評価が難しいという問題も明らかになった.すなわち,ゲーム理論に基づく検証方法はピンポイントの最悪状態に対する制御系の性能を示しており,全体的な制御系の限界性能を明らかにし,制御系の優劣を客観的に比較・評価するためにはさらなる工夫が必要であると考えられる. そこで,研究代表者が以前から提案している「可制御領域に基づく制御系の解析的評価法」の考え方を導入できないかを検討した.可制御領域は,「許容された範囲内の入力を用いて状態空間の安定な平衡点に到達可能な初期値の集合」と定義され,状態空間におけるこの可制御領域の大きさによって全体的な制御系の限界性能を解析的・客観的に評価できる.微分ゲーム理論に基づく最悪状態評価と可制御領域による全体的な限界性能評価を融合することにより,両者の利点を生かせるのではと考え,融合方法について検討したため進捗状況がやや遅れる結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的であった微分ゲーム理論を応用した制御系検証手法に,研究代表者が開発してきた可制御領域に基づく制御系検証手法の考え方を導入し,これらを融合するという新たな方向性で制御系の解析的検証手法を検討する.すなわち,車両を最悪状態に陥れるパラメタや外乱を求め,この条件下における可制御領域の大きさで制御系の性能を評価する方法を模索する. 具体的には当初の予定通り制御器の最適化と外乱・パラメタの最悪化問題を微分ゲームとして定式化し,最悪状態を求めたのち,第2段階としてその状態における可制御領域を計算し,これによって制御系全体の評価に繋げる. ただし,微分ゲーム問題の数値解法をより洗練し,計算精度の向上と計算時間の短縮を図る必要がある.これについても引き続き検討していく.
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Causes of Carryover |
当初の予定では車両運動シミュレーションソフトおよびデスクトップPCを購入予定であったが,進捗状況で説明したように,研究計画を微分ゲーム理論と可制御領域による評価法の融合を検討したため,車両運動制御系への応用がやや遅れた.これによって車両運動シミュレーションソフトおよびデスクトップPCの購入を次年度に回したため,物品費が当初の予定より少なくなったものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として,車両運動シミュレーションソフトおよびデスクトップPCを購入予定で,これを用いて実際的な応用例の計算を実施する. 旅費として国際学会出席のための海外出張費,および国内出張費を計上する.
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