2015 Fiscal Year Research-status Report
表面粗さ用ローパスフィルタの振幅伝達特性と位相補償特性の計算方法開発
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15K05880
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
沼田 宗敏 中京大学, 工学部, 教授 (00554924)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表面粗さ / ローパスフィルタ / 振幅伝達特性 / 位相補償特性 / 計算方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は下記1, 1*,2の3ステップを実施した. 1. 点対称拡張法を用いた実測データの境界条件の除去法確立:点対称拡張法は基準点を中心にデータの点対称拡張を行った後,両端の高さが等しくなるようにせん断処理を行う手法である.ガウシアンフィルタ,スプラインフィルタなどの境界条件型ローパスフィルタ,ロバストフィルタの3種類で,最適の点対称基準の理論値を求め実験で効果を確かめた. 1*. 振幅伝達特性の高精度計算を妨げている第2の要因の解明:フィルタ結果にデータ端外側のデータが影響を与えていることを明らかにした.開いた輪郭曲線の出力データには入力データの外側のデータのフィルタリング結果も含まれるため,入力データと出力データとのスペクトルの比から振幅伝達特性を計算すると計算精度が落ちる.このため,入力データを周期的に繰り返した上でローパスフィルタを適用しないと,正しく振幅伝達特性を計算できないことが判明した.本研究ではこれを実験で確かめた. 2. 離散的フーリエ変換を用いた振幅伝達特性の計算方法開発:境界条件のないデータとそのフィルタ出力から各々の離散的フーリエ変換を求め,そのスペクトルの比から振幅伝達特性を計算する.まずは,境界条件のない点対称な理論データをそのまま用いて,各型のローパスフィルタの振幅伝達特性を計算した.ガウシアンフィルタでは理論的振幅伝達特性に一致することが確かめられ,境界条件型フィルタの振幅伝達特性およびロバストフィルタの振幅伝達特性では理論的振幅伝達特性に一致しないことが確かめられた(2-a). これらの成果のうち,1のガウシアンフィルタについては国内学会で口頭発表,ロバストフィルタについては国際会議発表(AISM)および邦文論文(精密工学会誌)掲載となった.また,1*,2については英文論文(Precision Engineering誌)に掲載された.さらに,1,1*,2に関し国内シンポジウムの招待講演で口頭発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は以下の計画(1と2のステップ)を実施する予定であった. 1. 点対称拡張法を用いた実測データの境界条件の除去法確立:点対称拡張法は基準点を中心にデータの点対称拡張を行った後,両端の高さが等しくなるようにせん断処理を行う手法である.この手法により,データ端の不連続性に起因する離散的フーリエ変換の予期せぬ振動を抑えることができる.ガウシアンフィルタ,境界条件型ローパスフィルタ,ロバストローパスフィルタの場合で,最適の点対称基準の理論値を求め実験でこれを確かる. また,平成28年度は以下の計画を実施する予定であった. 2. 離散的フーリエ変換を用いた振幅伝達特性の計算方法開発:境界条件のないデータとそのフィルタ出力から各々の離散的フーリエ変換を求め,そのスペクトルの比から振幅伝達特性を計算する.まずは,境界条件のない点対称な理論データをそのまま用いて,各型のローパスフィルタの振幅伝達特性を計算する(2-a).次に,実測データに対し点対称拡張法を適用し,各型のローパスフィルタの振幅伝達特性を計算する(2-b). 平成27年度の計画であったステップ1は達成され,点対称拡張法を用いた実測データの境界条件の除去法が確立された.平成28年度の計画であったステップ2のうちのステップ2-aについても前倒しで実行し,境界条件のない点対称な理論データを用いて各型のローパスフィルタの振幅伝達特性を計算した.
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Strategy for Future Research Activity |
(平成28年度の研究計画) 2-b. 実測データを用いた振幅伝達特性の計算:点対称拡張法を用いて境界条件を除去した実測データを用いて,各ローパスフィルタの振幅伝達特性を計算する.実測データは測定機SE300-38(小坂研究所製)を用いる.ガウシアンフィルタの計算結果はその理論的特性に一致すると期待される.また,境界条件型の2つのローパスフィルタの振幅伝達特性は理論値と異なるものの,理論データから算出した振幅伝達特性の計算結果に一致すると期待できる.この一致により実データを用いた本研究の有効性が確かめられる.一方,ロバスト型の2つのローパスフィルタの場合は,理論的振幅伝達特性と一致しないのはもちろん,理論データから算出した計算結果とも一致しないと考えられる.なぜなら,ロバストフィルタのロバスト性はデータの外れ度合いに応じて変化するからである.これを実験で検証する. (平成29年度の研究計画) 3.離散的フーリエ変換を用いた位相補償特性の計算方法開発:ローパスフィルタの位相補償特性は,実測データに対してローパスフィルタの出力データがどれだけ遅れているかを示す指標である.フィルタの重み関数が陽に与えられているガウシアンフィルタでは,左右対称のフィルタ形状のため位相遅れはない.一方,境界条件型やロバスト型のローパスフィルタでは,位相遅れは不明である.このような位相補償特性を,離散的フーリエ変換の実数部と虚数部を用いて計算する手法を確立する. なお,ステップ2-bおよびステップ3は半年ずつ前倒しで実行予定である.
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Causes of Carryover |
2015年度で購入予定であった表面形状測定機SE300-38の見積金額が1,400,000円であったのに対し,実際の購入金額は1,389,960円で10,040円の差額が生じた.また,実験補助の人件費に250,000円を予定していたが,予定より実験が早く進んだため229,200円となり,20,800円の差額が生じた.この計30,840円の差額分が,次年度使用額38,187円の生じた主な理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実測データを用いた振幅伝達特性の計算のため,測定機SE300-38(小坂研究所製)を用いてサンプル測定を行う.より多くの実測データで検証し振幅伝達特性計算の信頼性を向上させるため,次年度使用額38,187円を研究協力者(中京大学大学院生)の実験補助費に充てる予定である(約44時間分).
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