2016 Fiscal Year Research-status Report
遠隔操縦で検査できるコンクリート壁面検査ロボットの開発
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15K05905
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高田 洋吾 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (70295682)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移動ロボット / 社会インフラモニタリング / 数値流体力学 / モデリング / 制御系設計 / 横風耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
橋梁やトンネルなどの社会インフラや、ビル、マンションなどの建築物について、老朽化が問題視されている。定期的点検と要補修として判断された損傷に対する大規模補修に比べ、頻繁点検と軽度補修の方が、社会インフラや建築物を長寿命化させることができる。しかし、労働人口減少の影響で点検員は減る方向にあるにもかかわらず、点検対象は益々増える方向にあるため、ロボットによる点検に強い要望が寄せられている。 そこで、社会インフラや建築物の壁面を撮影しながら走行可能なティルトローター駆動式壁吊観測用ロボット調査機 HORNETを開発した。壁面を検査するという目的において、マルチローターラジコンヘリと比較して、HORNETは、操縦安定性、消費電力、耐外風性能などの面で著しく優れている。2015年度までの研究では、フィードバック制御なしで実施してきたため、高所における強風に流されていた。そこで、2016年度はHORNETに横風耐性を備えるために、フィードバック制御系設計を目的に研究を進めてきた。 本研究では、ロボットのモデリングを目的として、プロペラ周りの空気の流動解析を数値流体力学(CFD)で2次元的に行い、ロータブレードの各断面における抗力係数と揚力係数を求めた。そして、得られた抗力係数と揚力係数を含めたロボットの運動方程式を導き、ルンゲ・クッタ法で数値的に解いた。結果として得られたロール・ピッチ・ヨーのオイラー角を使用した3次元力学モデルを用いて、複雑な運動挙動を示すHORNETのシミュレーションが可能となり、また、フィードバック制御(ごく簡単なPD制御系)を構築することができ、実際に横風がある環境下において実験した結果、横風耐性が著しく改善したことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発済みのロボットHORNET一号機を用いて、面が粗い垂直壁にロボットの爪が接触しているときの消費電力が、非接触で空中静止しているときの消費電力に比べて少なくて済むことを確認した。また、HORNETを遠隔操縦するために、広角レンズ付きカメラ、FPGA、Wi-Fiモジュールからなる撮像送信システムと、Wi-Fiモジュール、FPGA、TFT液晶モジュールからなる受信データ表示システムを開発し、カメラが捉えた画像を外部へ送信することに成功した。そのシステムをHORNET二号機に搭載し、遠隔操縦用VHDLプログラムを加えることでHORNETの垂直壁面移動時の実験中に、カメラ画像に基づいた遠隔操縦を試みることができた。 現場適用に向けて、まず身近な大学内の六階建て校舎で、安全確保の上、地上から屋上に向けて壁面走行実験を試みた。2015年度に行った実験において、横からの突風に煽られてHORNETが激しく暴れる現象が確認されたが、2016年度の研究を経て、横からの突風があってもHORNETがその位置から押し流されなくなった。その制御系設計に関して以下に述べる。 HORNETの制御系設計を実機で行った場合、制御系が不安定の場合、実機が暴走する恐れがあるため望ましくない。そこで、HORNETの運動を出来る限り正確に再現できる力学モデルを作成した。そのために、プロペラ周りの空気の流動解析を数値流体力学(CFD)で2次元的に行い、ロータブレードの各断面における抗力係数と揚力係数を求め、得られた抗力係数と揚力係数を含めたロボットの運動方程式を導いた。ロール・ピッチ・ヨーのオイラー角を使用した3次元力学モデルを用いて、複雑な運動挙動を示すHORNETのシミュレーションが可能となり、また、フィードバック制御(ごく簡単なPD制御系)を構築することができた。結果として、HORNETの横風耐性を強化できた。
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Strategy for Future Research Activity |
HORNETの開発目標の一つは、マルチロータヘリコプタと比べて消費電力を大幅に低減させることである。壁を走行中、壁面が粗い場合は、車輪の爪と壁面との間に摩擦が生じ、プロペラの推力を低減できることは確認できている。しかし、本ロボットの使用目的が、橋梁等の社会インフラや、ビル、マンションの外壁である以上、壁面が粗いとは限らない。そこで、楊抗比の優れたロータブレードに関してCFDを用いて検討し、これから試作するHORNET三号機に取り付ける。なお、新ロータブレードを3Dプリンタで試作することを考えていたが、その材料がロータブレード用として適さないため、FRPを翼形状に変形して作ることになるかもしれず、詳細は今後検討していく予定である。また、本体に関しては可能なかぎり軽量化を図り、消費電力が小さくて済むようにする。また、壁面が滑らかな建造物であったとしても、爪を引っ掛ける箇所が局所的に存在するため、引っ掛けやすい爪形状について検討する。また、演算装置用FPGAについて、今後は打音診断を念頭において、計算しやすいZynqを活用する。 壁面走行の実験を何度も繰り返し行ってきた分かったことがある。壁の最上部から垂らした釣り糸をHORNETに取り付けて、糸が絶対にたるまないようにしておけば、消費電力と操縦安定性、耐外風性能の全てが向上する。そのため、糸で吊るすことを前提とした新コンセプト機を開発するのも重要ではないかと考えるようになった。ただし、糸でロボットを吊るすことが出来ない使用環境も数多く存在するため、糸で吊るした場合のロボットと糸無しとして研究を進めたロボットの両面で様々な検討をしてみたいと考えている。 最終年度に入ることもあり、HORNETが実用的で、実際に現場で使えるであろうと建築業、社会インフラのメンテナンス業で務める技術者に判断しやすい実験結果が得られるよう努める。
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Research Products
(5 results)